トトロはあながち嘘ではないのかも

そんなM君に、「去年言ってたこだま様、今年は会いに行こうね！」と言ってみた。

すると、M君は不思議そうな顔をする。「え？M君、こだま様は会わなくていいの？」

私が戸惑っていると、Aが「誕生日来てからね、不思議なもの見えなくなっちゃったみたいなの」と言った。

こういう話をしているときに必ずヌッと現れるおばあちゃんが、「数えで５つまでしか式神様は見えないよ。」と言った。見えないどころか、M君はもう不思議なものの存在自体忘れているようだが、よく考えたら私も何一つ、幼いころにあった不思議なものとの体験は覚えていない。

ほら、４歳とか５歳のころのホームビデオとか見たら、ほんのわずかに覚えていて「懐かしいなぁ～」なんてなるでしょう。しかし私は、不思議な体験をしている幼いころの私のホームビデオを見ても、何一つ思い出せなかった。

「K君もこだま様って言ってたよね～」とAの母。

「え！それホームビデオ残ってますか？？」聞くと、たぶん残ってるとのことから、Aと一緒に私たちのホームビデオを夜通しで見てみることにした。

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確かに幼いころの私とAは、こだま様に関する言動は何個もあった。

正直、記憶には一ミリも残っていないのだが、私自身に起きていた出来事なので、まるで思い出したかのような体で説明させてほしい。

「こだま様」は、私たちが４歳のころの遊び相手だった式神様のようだ。

４歳のころのホームビデオで、こだま様に「どんぐり」をもらうために毎日のように遊んでもらっている、と発言している私たちが映っていた。

しかし、どんぐりをもらえたことは一度もなかった。

どんぐりなんてどこにでも転がってる代物なんだから、なんでこだま様からのどんぐりがそんなに欲しかったのだろうか。

４歳のホームビデオの最終日、家に帰ってきた私たちは、

「かくれんぼの途中だったけど、ご飯の時間だから帰ってきちゃった」

と言っていた。このかくれんぼでこだま様を見つけることができれば、こだま様に、珍しいのであろうどんぐりを貰うことができたのだ。

去年、M君が「こだま様が会いたいって言っている」と言っていたのは覚えているだろうか。

もしかしたら、こだま様は私とAが見つけてくれるのを待っているのかもしれない。まだかくれんぼを続けているのかもしれない。

去年M君が、悲しそうな顔をしていたのも、まだ私たちに見つけてもらうまで辞めることができないかくれんぼを続けていて、M君とは遊べないといわれたのだろう。

と、勝手に解釈した私は、Aに

「今すぐこだま様に会いに行こう。見つけてあげよう。」

と思い切って言ってみた。

もう日付は回ろうとしていた夜中のことだった。

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Aを連れ、私はこだま様に会うために外に出た。

去年のM君であれば、隠れているこだま様の場所を見つけて知っているんだろうが、もう記憶を失っているため場所を聞くことができない。

しかし、森の中を歩いていると、

あからさまに美しい、一本の木を発見した。

真夜中なのに、なぜかひときわ目立って見えている。月の光を吸収して発光しているような、そんな印象すら受けてしまう。