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ヒトコワ

ねこじろうさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

ケンちゃんクリーニング
長編 2023/03/17 20:43 10,516view
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そして右手奥の壁際には天井まで届く棚が置かれており、様々なポーズをした女の子のフィギュアが並べられていた。

その全てはきちんとビニールで包装されている。

ケンちゃんは、ぐったりとなった女性を床に寝かせると、ホッと一息ついた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆

─遅いなあS美、、、クリーニング屋さんに行くと言って出ていったきり、もう大分経つけど、、、

リビングのソファーに座るY子が、携帯画面で時間を見ながら呟いた。

S美とY子は同じ女子大に通う二十歳の女性で、とあるマンションの一室をシェアして暮らしている。

その日の夜、二人はT大の男子学生と合コンをする予定をしていた。

S美はそこに着ていく服をクリーニングしてもらうと言って朝イチに出ていったのだが、もう昼を過ぎようとしている。

携帯にも連絡を入れたが、連絡をとることは出来なかった。

─もしかして、事故?

一抹の不安がY子の胸をよぎる。

─とりあえず、クリーニング屋さんに行ってみよう。
そしたら、そこの店主が何か知ってるかも。

彼女はそう思って立ち上がり急いで上着を羽織ると、マンションを出た。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【ケンちゃんクリーニング】は、マンションから歩いて5分のところにある。

近くて便利ということで、Y子もたまに利用していた。

昔ながらの商店の立ち並ぶ中にあるクリーニング屋のドアを、Y子は開ける。

イラッシャイマセ、、イラッシャイマセ、、

無味乾燥な女性の声が彼女を出迎えた。

しばらくするとケンちゃんが「いらっしゃいませ」と笑顔で現れる。

Y子はカウンター前に立つと、かいつまんで帰ってこないS美のことを話し、最後に「何か知りませんでしょうか?」と尋ねた。

ケンちゃんは腕組みをして考えるような姿を見せた後、こう答えた。

「確かに朝方そのような女性が来店され、今日中に仕上げてほしいと言われましたが、無理ですと言うと黙って帰られましたよ」

「そうですか、分かりました」

そう言ってY子はケンちゃんに頭を下げると、店を出た。

その後彼女は、近辺にあるクリーニング屋をしらみ潰しに廻ってみたが、残念ながら何の手掛かりも得ることはなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆

Y子がマンションに帰ろうと歩きだした頃には、もう夕暮れになろうとしていた。

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コメント(2)
  • 「洗濯屋けんちゃん」なら知っていますが‥

    2023/03/17/22:00
  • 文章うますぎます。ひきこまれました。

    2023/04/24/16:18

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