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ヒトコワ

リュウゼツランさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

おまもり
長編 2023/03/02 20:25 14,709view
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家に帰った僕を鬼の形相で待ち受けていた母は、お守りを勝手に持ち出した僕を烈火の如く叱った。

あのお守りはお婆ちゃんから貰ったもので、あらゆる痛みを根源から消し去ってくれるというとんでもない効能を持った一品らしく、難産だった僕を出産中の母はあのお守りを握った瞬間痛みが消え去り、そしてまもなく僕はこの世に生を受けたとのことだった。

「どこかに落としてしまった」と伝えると複数回頭を引っ叩かれたけけど、まぁしょうがないかと呆れながらも諦めたらしい母は僕を許してくれた。
そうか。どんな痛みも消してくれるのか。じゃあきっとカナコも守ってくれるんだろうな。

よかった。カナコにあげることができて。

しかし翌日、彼女の顔を見て僕の喜びは霧散してしまう。
「……どうしたの、それ」
「あー、転んだ」

カナコの左目の周りにはアザができていた。
転んだアザじゃないこと位、小学生の僕にだって分かった。

でも、カナコはそれ以上の追求を拒むかのように露骨に話題を変えるので、僕もそれ以上突っ込めない。

子供だから回復が早いのか、三日もするとほとんど気にならない程にまで薄くなったアザは、四日目に更に大きなものへと変わった。
流石に僕も黙っていることはできなかった。

カナコはやはりそのアザについての言及を避けようとしたけれど、僕は頑として譲らなかった。

公園のベンチに座りながら、諦めたように嘆息して、彼女は語り出す。
まず、アザを作った犯人は彼女の父親だった。

正直それは予想の範囲内で、というか明らかに大人の拳で殴られたような感じにも見えたから、僕はうんうんと頷いて、自分が彼女に取って味方であり、同時に理解者であることを言外に示す。

しかし、彼女の話はそれだけでは終わらなかった。
カナコは父親に性的虐待を受けていた。被害を語る彼女の口からは、12歳の僕には想像もつかない卑猥な言葉が次から次に飛び出し、耳を塞いでしまいたいのを必死で我慢した。

三年前から続くその行為は日増しにエスカレートし、普通の性行為に飽きた父親は異物を挿入することを楽しんでいるとのこと。
最初は、どこか自嘲的に笑いながら話し出したカナコだったけれど、いつからか声が震えていた。

彼女の股の間に父親がテレビのリモコンを挿れたクダリで僕は立ち上がり、「警察に行こう」と彼女の手を握る。

僕が話を遮ったのは、義憤に駆られたからというより、もう聞いていられなかったからだった。

これはもう明らかな児童虐待であり、紛れもない犯罪行為だ。
涙を拭う素振りを見せたカナコは、憤る僕の裾を掴み、何度も左右に首を振った。
「ダメ」
「なんで!」
「お母さんが死んじゃうから」
お母さん? 彼女の両親は離婚したんじゃなかったのか?
「え、お母さんも一緒に住んでるの?」
「ううん。入院してる」
「病気?」
「うん」
「でも……だったら尚更……」
「お母さんのね、入院費とか、色々、お金かかるから。だからうち、貧乏だし」

2/7
コメント(4)
  • 胸が痛い。

    2023/03/03/02:12
  • 最後に予想を裏切られた…
    非常に面白かったです

    2023/03/07/00:13
  • 貴方は、彼女を守ったよ。

    2023/05/04/13:31
  • 歳の割に渋い割り切りしてんな、少年。
    いい漢になるぞ。

    2023/09/13/04:50

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