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呪い・祟り

まろさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

邪神 石薙命
長編 2023/01/27 22:39 10,347view
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両親に催促されて各々が車に乗った。もちろんAとBはCと一緒に乗った。Cはまだ口もきけないでいて震えが止まらなかったらしい。車の中にはCの祖父母も乗っていて、Aは祖父母からこんなことを聞いたと言う。

「あの神社に行けばきっと神主さんが助けてくれる。ばあちゃんも若い頃、タヌキの霊に取り憑かれた友達を神社に連れて行って助けたことがあるの。今は神主さんの息子さんかお孫さんに代替わりしてると思うけど絶対に助けてくれる。安心しなさい。」

AはBにあの神社は、石薙命を鎮める神社であってそう言うことはできないのではないかと聞いたが、Bもそれについてはよく分かっていなかったらしい。それどころか、あの神社は悪い気が漂っているから極力Bは近づくのを避けていたようだ。それを聞いてAは何やら胸騒ぎがしたようで、自分が廃墟へ行くことを主宰したことを後悔した。

正午あたりを過ぎた頃、車が神社に到着した。AとCの両親は神主を探しに行った。AとBはCを見ていろと言われたが、Cの様子に変わったものは見られなかった。Bも、何やら胸騒ぎを感じていたようで霊感がないAも只事では無くなったと思ったらしい。車の中にいた時よりも口数が少なくなっており、ひたすら神主が来るのを待ち続けた。Aにとっては待つ時間が気の遠くなるように長かったらしい。しばらくすると、両親が1人の男を連れて戻ってきた。

「君がC君だね。話は両親から聞いたよ。でももう大丈夫。堂の中に入りなさい。」

その人が神主で、きちんと正装を着ておりAもBも安心したそうだ。Cは返事もできず、ひたすら震えていたその刹那、ゆっくりと神主を見上げ、今まで見たことのない表情を見せた。まるで、神主に家族を殺されたかのような目で神主を睨みつけていたそうだ。そして、

「ううううううううぅぅぅぅ….」

と唸り声を上げ始めた。明らかにCの声じゃない。AとBはすぐに気付いたらしい。Cの声はもう少し低くて、女性が苦しんでいるような声をCは出したと言う。そして、暴れ出した。皆がCを取り押さえる中、Cはヘドロのようなものを神主に吐き出した。不幸中の幸いで、ヘドロのようなものは神主には届かなかったが、辺りが悪臭にまみれた。急いで全員で暴れるCを堂の中に担ぎ入れたと言う。僕は霊体験などしたことはないがAの話にはかなりの臨場感があった。

堂の中に入るや否や、Cは赤ん坊のようにギャーギャー泣き始めたと言う。そして紅く染まった首を掻き始めた。神主の顔をAはその時見たそうだが、あの神主でさえも顔色が悪く

「この事態は想定していませんでした…この子にはとても怨念が強い霊が取り憑いています。全力を尽くしてもこの霊はこの子から一時的に離れるだけになるかもしれません。その場合は、厄介ですがC君の家に結界を張る必要があります。除霊をした後も、気を抜かないでください!」という。

「この子を…Cをどうかお願いします…」

そういったのはCの母だった。家族は涙を流しながら神主に頼るしかなかった。

「では除霊を始めます。怨霊がC君から抜け出た後も近くにいる人に再度取り憑く可能性があります。C君以外の人は申し訳ないですが結界を張った別の部屋で待機していてください…絶対に外に出てはだめですよ。必ずC君は助けます。私にお任せください。」

A達は他にどうすることもできなかった。神主しかそういうことはできない。幽霊を信じないAも名状し難く偽りのないこの現象を理性ではなく感覚で理解することしか出来なかったそうだ。そのままA達は別部屋に連れて行かれ、Cの除霊が始まったという。A達は部屋の中で終始無言で気まずい雰囲気が流れていたそうだ。しかし、しばらく時間が経ちその沈黙を初めて破ったのはBだった。

「なんか、吐き気がする…息が苦しい…」

と言い出しBが唸り始めたのだ。AやCの両親達はみんなでBに駆け寄り背中をさすっていた。しかし程なくしてBの体調は元に戻った。Bはものすごい息切れをしており、

「お前除霊中になんか見たのか?」

とAが聞くと

「地獄を見た…地獄を見た…」

とひたすら呟いていたらしい。その後神主とCが部屋に入ってきて、

「全て終わりました。C君にいた怨霊は祓いましたよ。本当におつかれさまでした。」

と、笑っていた。Cもさっきまでとは全く違う顔色になっており、幾分よくなっていた。Cは泣いてはいたがほっとしたような顔をしていたという。首の発疹も消えていた。

「あの怨霊は、首を吊って死んだようなのでそれがC君にもあらわれたのでしょうね。C君の首のアザはそれです。しかしまだ油断はできません。このお札を、C君の部屋の四方の壁に1週間は貼ってください。これで霊はもうC君に取り憑くことはないでしょう。」

Cの親は涙を流しながら神主にお礼を言い、その日は解散になったらしい。その時はBまでもが涙を流していた。

その3日後のことだった。Cの死がAとBに伝わったのは。Cはあの後突然高熱を出し寝込んでいたらしくそのまま帰らぬ人となったそうだ。Cの両親は神主を追及したが泣き寝入りすることしかできなかった。Cの両親はその後、一家ごと失踪してしまい、どうなったかは今でもAにも分からないらしい。

Aは、やはりあの怨霊の力が強かったと当初は思っていたらしいが、Bの話を聞いて戦慄したという。Bは、Cの除霊中に何を見たというのか、BはAに全て打ち明けた。

そもそもCについていた霊はそこまで力を持っていない霊だったそうだ。最初に書いたから察しているだろう。Cを殺したのは、石薙命だ。あの神主は、除霊をしていたのではなくて、石薙命をCに取り憑かせたのだという。あの霊は、石薙命の怨念が強すぎて消滅してしまったらしい。そしてあのお札は、空き巣がターゲットの家につけるマークのようなものらしい。Cの部屋にマークをつけて石薙命をCに取り憑かせ、殺したというのがBが暴露したことだった。つまり、最初から神主はCを殺す目的だったということだ。Bが予想するに、神社についたCが神主をこの世のものとは思えない形相で睨みつけて唸ったのは、Cに取り憑いていた霊もあの神主に殺された霊だからという。

僕は、あの時のBの涙の意味が分かった。Bはあの時にすべてを察したのだ。Cが神主に殺される運命を悟ったのだ。

過去に、その一家が神主に騙されて一家心中したというのがBの結論だ。その一家を破滅に追いやったのも石薙命だそうだ。石薙命はそうやって力を蓄えているらしい。

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コメント(4)
  • 怖い。
    許せない。
    善人ぶった悪人。

    2023/01/28/02:09
  • まろです。Aはその地元へは戻る気は一切ないと言っていたので神主が今何をしているかは不明ですが恐ろしいですよね。正月によく行く神社でその時の神主はものすごく優しい人だったとAは言っていました。人の裏の顔は怖いですね。

    2023/01/28/21:15
  • どの辺りの神社でしょうか?

    2023/01/28/23:43
  • まろです。どの辺りか自分も分からないんですよね… 聞いても濁されました。

    2023/02/02/22:42

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