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takeさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

彼女がそうである理由
短編 2023/01/04 12:14 1,891view
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友人のK美に聞いた話です。
彼女とは大学生のとき知り合いましたが、そのときから現在に至るまで、髪型はうなじと耳が出るくらいのベリーショートです。
また、無類の綺麗好きで掃除は毎日するのが当たり前、暇さえあればコロコロクリーナーをかけているそうです。
それには理由がありました。

K美は、子供の頃は髪を長く伸ばしていました。
長い髪というのは抜け落ちているとよく目立ちます。風呂で髪を洗うと、排水口にいっぱい溜まるほどです。
彼女はお祖母ちゃんや母親から、部屋や廊下の抜け毛を毎日掃除するように躾けられました。
とくに排水口に髪が絡まっていたり、湯船の湯に浮いているものは、風呂を出る時に片付けておかないと大層叱られたそうで、

それが疎ましくて腹立たしく、面倒で仕方ありませんでした。
小学生のとき、家族の中で風呂に最後に入った彼女は、髪を掃除せず放置したことがありました。

その日の夜、トイレに起きたK美が洗面所で手を洗っていると、浴室のほうから、
シャリ、シャリ……と、何かを噛んでいるような音が聞こえてきます。

怖かったのですが、好奇心に抗えず、浴室のドアをそっと開き、隙間から覗くと……。
何者かが青黒い細長い手で排水口から髪の毛を掴み出し、口に運んでいるのが見えました。
その姿は地獄絵図などで見る、餓鬼のようだったといいます。

悲鳴をあげて、その場から逃げ出したものの、腰が抜けて廊下でへたりこんでいると、

何事かと両親やお祖母ちゃんが起きてきました。
彼女が泣きながらさっき見たことを話すと、
「ちゃんと髪の始末をしないからだよ」
と、お祖母ちゃんに叱られました。

K美の家は旧家で古い日本家屋でしたが、『何者か』が同居している、と代々言い伝えられていて、
それを『髪齧(かじ)り』と呼んでいます。
今日のように髪の後始末しないと、姿をあらわして髪の毛を喰むのだと。
ただ、きちんと髪を掃除していれば出てこないし、とくに悪さもしないそうです。

それからK美は掃除魔となり、長かった髪をバッサリと切りました。
今は、彼女もその家を出て独立していますが、それが『無類の綺麗好き』で『決してロングヘアーにしない』理由だそうです。

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