能力なんてないはずなのに

でも高熱なので仕方なく布団でうとうとしながら寝て過ごしていました。そこへ、Ｓちゃんから電話がありました。
遊びの誘いでしたが、夏風邪をひいてしまったことを伝えて、また後日遊ぶことにしました。とても心配してくれて、いい友達ができてよかったなーと思いながら、また寝ていました。

次に起きたのは、母がすごい勢いで私の部屋のドアを開けたからです。普段は温厚な母なのですが、あまりの勢いに私は飛び起きました。
そこで伝えられたのは、信じられない言葉でした。「Ｓちゃん、亡くなったって。家が火事にあったんだって。」頭の中でその言葉を繰り返しましたが、理解できませんでした。泣くことも、話すことも、本当に何もできませんでした。

夏風邪が治ったころに、Ｓちゃんのお葬式に参列しました。まだ実感がわかず、泣くこともできませんでした。
その時にＳちゃんのお母さんから、火事について話をしてくれました。
実は火事の原因はＳちゃんのお父さんだったそうです。借金に苦しんで一家心中をしようと思ったけれど、ＳちゃんとＳちゃんのお兄さんだけが亡くなったと。Ｓちゃんが小さい時にあった火事もお父さんが原因だったと。

Ｓちゃんのことが忘れられず、Ｓちゃんが亡くなって１年後、火事があった家に行きました。その家はインフルエンザに罹ったときにみた夢に出てきた、火事の家でした。
驚きでいっぱいでしたが、それよりもＳちゃんが亡くなったことが悲しくて、その場で初めて号泣しました。