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煙巻さんによるにまつわる怖い話の投稿です

黒い靄が見えるようになった
長編 2022/12/05 21:44 5,283view
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あの靄は人…?
俺は靄の正体が人の怨霊的なものだと知り、Aがなんでそんなものに憑りつかれているのか考えていた。

その日の放課後、Aは憔悴しきったような顔でトボトボと下校していて、俺はそんなAの後ろ姿を下駄箱で遠目に見ていた。
正確にはAの後ろを眺めて固まっていた。
黒い靄はもはや完全に人の姿に見えている。
例えるなら透過率の高い人型の影が歩いているようなものだ。
着物を着たその影が、ずらりと長蛇をなすようにAの後ろに続いている。
いったい何人の、何十人の影がAに憑りついているのか、傍から見れば大名行列のように壮観だったが、その全てから陰気なオーラみたいな粘っこいものを感じた。

Aの生気を軒並み吸い取っているような印象だった。
だが、同時にそれが見えたとしても俺にはどうすることもできない事だと本能で理解できた。

あれに関わったら俺もたぶん憑りつかれるか殺されると思った。

だから俺はAに憑りついた影から目を逸らす事にした。
そして、数日後に後悔した。

ある日、いつも通り学校に行くと朝礼でAの訃報が知らされた。
交通事故だったらしく、後で聞いた話でAは即死だったと知った。
何でも、自分から道路に飛び出していったらしく、中には自殺だったという噂もある。

ただ、俺だけはAがあの影に殺されたと思ってた。

Aの訃報から何日かした時、俺は気になる情報を得た。
教室でAと同じ部活のBが話しているのを偶然聞いたのだが、何でもAは部活の仲間と肝試しをしてたそうで、その時に良くない事をしたらしい。

「もしかしてマジで呪われてたとかある?」

「いやいや無いだろ」

「お祓いいっとくか?」

そこには部活仲間らしい人達もいて、聞き耳を立てているとどうやらAとB、そしてそこに居る集団も肝試しをした仲だと分かった。

何処で肝試しをしたのかは知らないが、Aはその場所にあった墓石を蹴り倒してしまったらしい。
盗み聞きした限りでは、わざとじゃ無く、すぐに全員で元に戻して手を合わせたそうだが、Aはその翌日辺りから情緒不安定になってたそうだ。

つまり、俺がAの周りで見えていたあの黒い靄はその墓石に眠る怨霊だったのかもしれない。

それが分かったところでAはもう死んでしまったし、結局俺に出来る事は何もない事が改めて分かっただけだった。
Aとはそこまで親しくはないが、気の毒には思い、心の中で念仏くらいは唱えてやった。

もしかしたらそれがいけなかったのかもしれない。

ある日の事、窓際の席だった俺は授業中にちらりと校庭を見やった。
すると、校門の外に黒い集団が見えたので、一瞬ぎょっとしたんだが、よく見るとその靄がAに憑りついていたものにそっくりだと分かり、暫しの間、食い入るように見ていた。
なぜ黒い靄が校門に居るのかを考えていると、靄が次第に人の形に変わっていき、数十人規模が列をなして校舎を見上げるように直立しているのが分かった。

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コメント(3)
  • 今回の話も怖かったっす

    2022/12/06/01:00
  • 怖い怖い

    2023/07/18/22:05
  • 怖いとかじゃなくて、普通に超迷惑やん。
    Aはもっと苦しんで呪われればいい。

    2023/10/27/13:26

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