変わった先輩

私が高校生の頃の話です。

高校時代は周りの影響で悪いことを繰り返し、教師からは煙たがられるような存在でした。いつも不良メンバーで集まり悪いことをして両親を悲しませていました。

高校3年生の夏のことでした。そのメンバーのリーダー的存在である、２つ上のA先輩が関西で有名な心霊スポットのとあるダムに行こうと提案し、行くことになりました。
A先輩は後輩に少し気に入らないことがあればすぐに暴力をふるうような先輩でした。
そのダムは初めて行く場所ではなく、恐らくメンバーはみな一度は行ったことがある場所で怖くはなかったのですが、A先輩の暴力が怖いので、仕方なく、いつも集まる6人でA先輩の運転する車に乗り、ダムに行きました。

そのダムですが、実際はダムの奥にある、車も通ることのできないトンネルが有名なスポットで、地元では車でトンネルの近くまで行くと手の跡がついていたなど色々な噂のある場所でした。

その日もダムに車を停め、歩いてトンネルまで行きました。

トンネルに差し掛かった時に先輩が明らかにおかしくなりました。ガタガタと震え、ヤバいヤバいと小さな声でつぶやき、早く帰ろうと言い始めました。
急いでA先輩の車に乗り込みダムを後にしました。その日はすぐに解散しました。

それからの先輩は、皆が何があった？と聞いても答えないし、急に笑い出したり、怯えだしたりと気が狂ったようになっていました。皆は口を揃えて、A先輩はおかしいから関わらないでおこうということになり、疎遠になっていきました。
それから半年後、A先輩は電車に飛び込み死去しました。

警察によると薬物反応があり、自殺と断定されたみたいです。
結局A先輩が見たものは最後まで分からず、私たちもかなり憔悴していました。
恐らくもう2度とあのダムに近寄ることはありません。