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不思議体験

ねこじろうさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

確かに存在したSくんの話
短編 2022/09/16 16:34 3,426view
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◆◆◆◆◆

あれから月日は過ぎ去り、中年になった俺が久しぶりに小学校の同窓会に出席した時のこと。

貸し切りの洒落たたレストランに、20人ほどの男女が集まっていた。
店内のあちこちに丸テーブルが配置され、その上に置かれた銀のトレイには色鮮やかなオードブルが並べられている。
皆思い思いに丸テーブルを囲み、談笑していた。
その姿を見た瞬間に記憶が蘇る者もあれば、頭髪が後退したりお腹が出たりして全く思い出せない者もいた。

俺は、当時同じ公営団地に住んでいたAと話していた。

「俺たち、住んでいたのが同じ団地の3号棟の3階と4階だっただろう。おかげでいろいろと重宝したもんだな。ところで他にクラスメートであそこに住んでいた奴とかいたっけ?」

Aがコーヒーカップを片手に尋ねる

「そうだな、、、同じ学校じゃなかったけど、Sくんといって4号棟に住んでいた子がいたな」

そう言うと、Aはちょっと考えるように右斜めに視線を移した後、こう言った。

「4号棟?
いや、確かあそこの団地は3号棟までしかなかったはずだぞ。」

「え!?
だって俺、、、」

言いかけると、Aが遮るように言う

「間違いないよ。
だって俺の親父ってさあ、あの頃ゼネコンに勤めてて、あそこの公営団地が建てられた経緯とかも良く知ってたんだよ。
あそこ、確かにもともとは4号棟まで建てる予定だったそうなんだけど、ちょうど3号棟の南側一帯が墓地で、さすがに建てることが出来なかったそうなんだよ。
まあ、大人の事情という奴かな?

ハハハ、、、」

◆◆◆◆◆

帰りの電車の中。

日曜日の夜だからなのか人影は疎らだった。
俺は長椅子に座り身体を後ろ側によじって、車窓に映る自分の顔を見ながらSくんとの思い出の糸を手繰り寄せていた。

元気良く部屋に入っていくSくんの背中。

その時廊下奥に見える暗い和室。

奥でボンヤリ灯りを放つ豪華な仏壇。

その前で正座して、ただひたすら祈っている日本髪で着物姿の女。

そしてベッドに座り、じっとこちらを見ているSくんの空虚な瞳。

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