奇々怪々 お知らせ
           
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ヒトコワ

寄生虫(※虫注意)
短編 2021/02/12 20:15 2,327view
体験者 寺島 司 (仮名)

2015年 東京都 T区

会社員の寺島さんは、昼休憩で近くの定食屋に行くのが日課だった。
その日もいつも通り、定食屋へ向かう。
道中で雑居ビルの細い路地から野良猫が出てきた。人懐っこく寺島さんの足元に擦り寄ってくる。猫好きの寺島さんは、思わず猫を抱き上げてその首元を撫でた。

柔らかい毛の中に何か硬いものを感じた。見ると猫の首元から顎にかけて茶色のイボがびっしり生えている。その1つが寺島さんの手の中に転がり落ちた。

━━ダニだ

寺島さんは悲鳴を上げ、猫を放り投げてしまった。その後、いつも通り定食屋へ行き、食事をした。
彼はその時、手を洗っていなかった。

寺島さんは仕事を終え、帰宅の電車に揺られている。妙な倦怠感。服に擦れる肌がザワザワする。風邪を引いたらしい。
明くる日目を覚ますと高熱と頭痛に襲われ、会社を休んだ。病院の診断は「ただの風邪」だった。

自宅で寝ていると、妙にイライラした。病院の受付の態度の悪さ、長すぎる待ち時間、医者の適当な診療。怒りで頭痛が増す。頭痛で怒りが増す。

『クソッ!クソッ!』

気付くと寺島さんは自分の頭を狂ったように叩いていた。その時彼は気付いた。身体中が痛み、動きにくい。耳の裏、脇、股関節が、硬く腫れ上がっている。
力尽きて眠った寺島さんは、妙な夢を見た。

寺島さんは夢の中で、自室の床を覆うネズミの大群を見て、怒り狂う。潰しても、潰しても、怒りが収まらない。腹が減った。手のひら程の大きさのネズミを掴みあげ、口に運ぶ。

ブチッ ボリボリ

これが実に美味い。自然な甘さと、温かく塩辛い血。何匹も何匹も食べた。

『うまい……うまい……』

自分の「うまい」という声で目を覚ました寺島さんは、ガタガタと震えていた。意識が朦朧として、涙が止まらない。
最後の力を振り絞り、救急車を呼んだ。

寺島さんは大きな病院に運ばれ、血液検査を受けた。医師から告げられた病名は、「トキソプラズマ症」だった。

トキソプラズマとは、加熱されていない生肉や、猫の糞便などにいる寄生虫である。ほとんどの場合無害であるが、免疫力の低下した人間が感染した場合、重篤、もしくは致命的な症状を引き起こす。錯乱、言語障害、麻痺、昏睡などである。

この寄生虫について、恐ろしい研究報告がある。
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