火事で亡くなった隣人の匂い

もう5年以上も前のこと。私の実家から深夜に電話が入りました。母からの電話だったのですが、火事になったという連絡。

「大丈夫？怪我はない？」

慌てて電話で母に事情を尋ねました。すると、火事になったのは実家ではなくお隣の家でした。

ホッと胸をなでおろしたものの、実家も隣の火事で窓ガラスにヒビが入ったり、熱でカーテンが焦げていたり。翌朝、車で2時間ほどかかる実家に家族で向かったのです。

実家に着くと、消火したばりので辺り一面は焦げ臭い匂いが残ったまま。その日は実家の窓ガラスや焦げたカーテンの入れ替えなどで、慌ただしく終わったのです。

火事の騒ぎが落ち着くまで1か月ほどが過ぎたのですが、私も毎週土日に車で実家に行って、家の修復や罹災届など、老齢の母に代わり手続きをしたり。

やっと落ち着いて、火事の原因を母に尋ねたところお隣のご主人がノイローゼで自ら自宅に火を放ち命を絶ったらしいのです。私より一回り年齢が上だったのですが、子供の頃はよく遊んでくれたお兄さん。

その人は未だに独身で最近、仕事を解雇されていたのです。それが原因でノイローゼになってしまい、亡くなったというわけでした。

その日の夜は実家に泊まったのでが、外に出て火事で焼失したお隣の家の方向に向かって手を合わせました。心の中で亡くなったお兄さんが成仏できるように祈ったのですが、その時、私の顔の近くで焦げ臭い匂いが再び漂ってきたのです。

その時、私は妙に悲しい気持ちになったのですが、おそらく亡くなったお兄さんが私のところに近寄ってきたのかもしれません。

それ以降は何もありませんが、お兄さんは果たして成仏されたのか、今でも気がかりです。