ついてこないで

よく行くスーパーのレジに「タカムラ」という名前の苦手な男性店員がいました。

「お仕事お疲れ様です」「料理好きなんですか」とやたらと話しかけてくるので、私は曖昧に頷いて、他には何も答えないようにしていました。

気味の悪い思いはしても、そのスーパーは特売が充実していて便利だったので、我慢して通っていたのです。

そんなある日、またレジでタカムラに遭遇してしまいました。

すると彼が「O社にお勤めなんですよね。僕、新しい家具を揃えたいと思っていて……今度相談に乗ってもらえませんか？」と言ってきたのです。

私の勤め先は確かにO社で、インテリアを専門に取り扱っていました。

私は会計を済ませ、逃げるようにスーパーを後にしました。

そのスーパーへは二度と行きませんでした。

それでもタカムラは私を追ってきたのです。

ひと月ほど経って、家計簿をつけようと財布に溜まっていたレシートを見返した時でした。

品物の代金などが印字された一番下に「DOUSHITE KITEKURENAINODESUKA TAKAMURA」とあったのです。

私は目を疑いました。近所のスーパーだけじゃなくて、立ち寄ったコンビニや、喫茶店、デパート……どの店のレシートにもタカムラからのメッセージがありました。

私は全てのレシートを捨てました。

また次の日、スーパーで会計が終わり、私はおそるおそるレシートを見ました。

「DOUSHITE SUTETANO TAKAMURA」――タカムラからのメッセージは今でも続いています。