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不思議体験

バクシマさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

廃旅館からの誘い
長編 2022/04/11 11:45 8,327view
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すでに周囲は夕暮れで薄暗くなっており、道路を挟んだ別の廃屋の窓辺から、血の気の無い家族がこちらを見てるやら、木製の電柱の陰から背の高い女がニタニタ微笑んでるやらが気持ち悪かったので、不本意ながら早々と旅館に入りました。

・・なかには誰もいませんでした。

受付らしい机の上には、薄汚れた紙が置かれており、そこには、「昭和二十一年廃業」と書かれていました。
「1年で潰れたのかよ」と心の声がポツリと外に漏れると同時に、急に背筋が凍りました。

鏡越しに、自分の後ろに、誰かがいる・・

私をゆっくりと後ろを振り返りました。

・・そこには誰もいませんでした。

私はどうしていいかわからず途方にくれてしまい、とりあえず「松」という名の部屋に泊まることにしました。

部屋は当然荒れていましたが、他の部屋よりかは幾分かマシに見えます。
しかしながら、あらためて夕食の膳なんて望むべくもないことを知り、私は落胆しました。
そして、やることも無いため、早々と寝ることにしたのです。

日頃からソロキャンプをしていた私は、慣れた手つきで畳にペグ打ちを行い、無事に室内にテントを張り寝床に着くことができました。

眠りについてどれほどの時間が経ったでしょうか。
夜中の丑の刻ぐらいのことかと思います。

空腹に目を醒ました。

ボーッとして、
あれ、ここ、どこだっけ
ほんの数秒、考えました。

そして、自分の置かれている状況を思い出しました。

途端に、恐怖で身体が、凍りました。

ええ、私、これまで取り憑かれておかしくなっていたと繰り返し述べてきましたが、ここにきて、本来の自分に戻ったといいますか、普通の感性になったんです。

そして、辺りを見渡して

心臓がとまるかと思いました。

どうして、なんで、

いやだ、いやだ、いやだ、いやだ

なんで、テントの周りにこんなに人がいるの?

寝る前に動物避けで起こした焚き火の灯りに照らされた、何人もの影が、ゆらゆらとテントを囲んでました。

た、たすけて・・
恐怖で涙した私は必死に心の中で祈りました。
そして、「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と念仏を、何度も何度も繰り返し呟きました。
すると、ゆらゆらとした影は少しずつ薄れていき、やがては消えました。
ホッとした次の瞬間
私の体と寝袋の隙間から、下敷きのように薄っぺらい女が、にゅっと顔を出し、
地獄の底からうめくような声で

3/4
コメント(8)
  • 洒落怖の旅館の求人を感じる

    2022/04/11/12:32
  • 申し訳ないが
    恐いと言うより笑えた
    恐怖の極みのはずの会話の最中に
    マンゴーアレルギーを言うかwww

    2022/04/16/23:26
  • 投稿者様は友人と廃旅館に再度訪問してでしょうか?

    2022/11/07/22:12
  • んで投稿者と友人は廃旅館に再訪した話をお願いします。

    2023/01/08/23:34
  • 部屋で焚き火したの?

    2023/01/22/20:09
  • 旅館側からしたら面倒臭い客だから来てほしくないわな…

    2023/01/22/20:10
  • なるほど、二度と来てほしくないと思わせれば呪われることもないのか。
    怖い話の大半は、この方法で解決できるのではないだろうか(笑)?

    2023/11/04/12:30
  • 秋田の乳頭温泉(混浴)

    ここは笑うとこなのかな!?

    2023/11/13/00:53

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