天井の住人の足音

幼少期に引っ越してきた家は決して綺麗とは言えませんでした。二階建てでしたが日当たりが悪くいつもじめじめしている家でした。昔の家なので砂壁にすりガラス、トイレも和式で窓のカギはねじ締り錠でした。風が強い日はこの薄いすりガラスが割れないか子供ながらに心配したものです。

引っ越してしばらく経ったある日の夜。目が覚めた私は、天井からかすかにギーギーという音がしていることに気付きました。

隣には家族が寝ています。親を起こそうとしましたが、音の方が気になってしまい暗い天井に目を凝らしていました。

耳を澄ましてみるとやはり聞こえます。それはこの日だけではありませんでした。

夜中に目が覚めると高い確率でこのギーギーっという音が聞こえるのです。

だんだんと、それがねずみなどの小動物などではなく、人の足音だと気づいていきました。さらにゆっくりゆっくりと移動しているのす。

大人の足音でゆっくり歩くギーギーっという音は、今なら恐怖ですがあの頃の私に怖いという感覚はなく、どちらかというと不思議な感覚でした。

小さかった私は天井に人が住んでいてもおかしくないと思ったのかもしれません。

あの家には５年間住みましたが、その間その音は夜中だけ聞こえていました。