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不思議体験

ginさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

一本道で迷子になった話
短編 2021/08/05 11:49 1,234view

これは私が小学生の頃の話です。
夏休みのある日、母と弟と私の3人は山の中の廃校を改装したアスレチック施設に遊びに行くことにしました。その施設は川沿いに立っており、元が学校なのでかなり大きな施設でした。水遊びができたり、グラウンドでキャンプができたりと、色々なアウトドアが楽しめる施設で、毎年夏には何度も訪れた場所でした。大きな施設なので、看板もそこそこにあり、なによりも通いなれた場所。そして山の中の施設なので、途中からは一本道。迷うはずのない場所です。車に乗ってその施設の看板が出ている入り口から山道に入りました。左手に川を見ながら進みます。その施設の前には赤い橋が架かっており、私たちはその橋を目指して進んでいきました。

ところが、いつまでたっても赤い橋が見えないのです。

道はとっくに一本道。迷うはずがなければ、橋を見逃すはずがありません。施設そのものも元が学校だけに大きな建物です。しかし、いつもなら山道に入って10分ほどで着くはずが、もう20分は車を走らせています。おかしいな、着かないねと会話をしながら車を進めるも、一向に目的地に着きません。
さらに20分ほど経ったころ、さすがにおかしいという話になりました。きっと通り過ぎてしまったのだろう、あんな目立つ場所を見逃すなんて馬鹿だなあ、そんな会話をしながら引き返すことにしました。今度は見逃さないように、ちゃんと見てようねと、母が私と弟に言います。はーいと元気に返事をして私と弟は窓の外を、今度は見逃さないぞと見張っていました。

しかし、どれだけ山道をくだってもやっぱり橋も学校も見えません。そうこうするうちにその施設に向かう山道の入り口付近に着きました。すぐ向こうには私たちが目印にした看板も見えています。
その入り口では、たくさんの重機と立ち入り禁止の看板、大勢の大人たちが作業をしていました。

降りてきた私たちを見て、その中の一人が駆け寄り、どうされたんですかと声をかけてきました。母が施設に行こうとしていたと話すと、怪訝な顔をされ、「ここ、土砂崩れ防止の大規模な工事をするから、何日も前から立ち入り禁止ですよ、どうやって入ったんですか?」と言うのです。確かに目の前には立ち入り禁止の柵と看板があり、とても車が通れる状況ではありません。その作業員もどこか別の道があって、入り込んだと考えていたそうです。そして、「よかったですね、後30分も遅ければ、斜面の工事が本格的に始まって車なんて通れなくなるところでしたよ」そんなことを言いながら、厳重に封鎖されている柵をあけ、私たちをその山道から出してくれました。

これで、私の体験した奇妙な話はおしまいです。今でも母はあれは死んだ爺ちゃん(母にとっては父)が、早く帰れと注意して、学校を隠したんだと言っています。だから車を捨てずに帰れたと。私も同意見だと母には伝えています。
しかし、ならば何故私たちはあの山道に迷い込んだのでしょうか。立ち入り禁止の柵と看板で塞がれていたあの道に。そしてあのまま進んでいたら、私たちはどこにたどり着いたんでしょうか。

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