シホチャン

シホチャン知ってますか？
いきなりすいません、頭がおかしくなった訳ではありません
自分がまだ小さな時の話ですが今だに鮮明に覚えてる言葉で初めて必死になって覚えた言葉と言っても過言ではないです。
児童養護施設で1歳の頃から育った私にとって友達とは上手く話せないですが
幼心に同年代の友達は親に会えない寂しさを紛らわせてくれる大切な存在でした
絆のような、小さな我々親の居ない子供達はどんなに小さなつながりでも寂しさを忘れる為に
2度と胸が締め付けられる思いをしたくないからと
大切にしていたと思います。

だからね？簡単に忘れる事なんか出来ないんだよずっと俺たちシホチャンと遊んでたじゃん？

覚えてないの？まだ小学生にもなってなかった時期だよ？ヒュウガもタカヤもトモキもナオトもユカリもユリちゃんも一緒に走り回って遊んでた中間だったじゃん？
あの日だってみんなと縄跳びしてたの覚えてるよ俺！
小雨が降ってたけど春先であったかかったからみんな薄着で遊んでてさ、シホチャンも自慢のストレートのおかっぱ頭濡らしながら
小太りの丸顔で水たまりに足取られて転けて肘擦りむいたって泣き笑いのどちらとも取れる表情で冗談言ってたよ？

次の日になったら朝学校行くのに登校班一緒だったのに居なかったよね？なんで？
ヒュウガもタカヤもトモキもナオトもなんでシホチャン覚えてないの？
男勝りで俺たちがぬかるんだ畑に頭から突っ込んで遊んでたって付いてきてたじゃん
ユカリもユリちゃんも誰それ？って？
昨日雨の中お揃いの赤い縄跳びで遊んでたろ

施設の先生たちもみんな不思議そうな顔してたよね？なんだったのあの薄気味悪い貼り付けた顔
子供ながらに気づいたけど甘ったるい感高い声でシホチャンって誰？とか

この寂しさを紛らわせてくれたシホチャンの顔は俺絶対忘れてないよ
毎年この春になる頃に夢にも出てくるし
シホチャンに夢でいろいろ聞いてる
だから大丈夫。
平成七年
シホチャン知ってますか？覚えていますか？

＊名前は仮名です＊