毒蛾を踊る

僕も正直あまり目立つ方ではなく、
休み時間は行き場に
なんとなく困っているような感じでした。
もちろん
好きな子に声を掛ける勇気もある訳がなく、
その度に彼女の姿を目で追っては、
幸せに浸って居ました。

ですがある時、
小さな違和感に気付いてしまいました。

8月の始め辺りから、

普段はいつも最後まで教室にいる彼女が
帰りの会が終わるとすぐに
そそくさと荷物をまとめて
教室を後にするのです。

(まさか好きな人でも居るのか…？)
そんな事も頭をよぎります。

それから少し時は経って9月上旬のある日、
やっと思い立って放課後に
彼女が一体何をしているのか知る為に
跡を付けて帰る事にしました。

(当時はストーカーとか知りませんでしたから…)

薄紫の
彼女のランドセルを追って辿り着いたのは、
学校近くにある
少し寂れた神社の境内でした。
朱の剥げた鳥居や
苔むした石段等、
不気味で
僕も余り近づかないところでしたが、
お構い無しに
どんどん彼女は境内の奥へ奥へと
進んで行きます。