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呪い・祟り

津々さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

呪われた硬貨
長編 2022/08/14 23:02 2,414view
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私が数年前に体験した実際の話です。

私たちは大学の卒業旅行を計画していました。しかし、感染症が流行り始めた頃だったので国外は止めて国内で計画を練り直していました。

突然の行き先変更でなかなか行き先も決まらず行き先が決まってもホテルの予約がいっぱいという感じでした。なので、行き先で探すのではなく空いているホテルで探すことにしました。
すると探し出して間もなく、東北の地域にある○○旅館が見つかりました。私は東北に田舎なイメージを持っていましたが、調べてみると観光地が沢山あり卒業旅行は東北地方に決定しました。

旅行当日。私たちは約4年間、苦楽を共にしてきた友人との学生最後の旅行を楽しもうとかなり計画していました。
ギリギリ予約の取れた旅館でしたが、ワクワクで旅館に向かいました。駅からタクシーに乗り行き先である旅館を伝えると、運転手は少し怪訝な顔をしたのが見えました。なので、私は運転手に「○○旅館って評判よくないんですか?」と聞いたのですが、運転手は無言でした。

旅館に到着して運転手が無言だった意味が分かりました。手入れの行き届いていない玄関先、草が生え放題の庭先、よどんで見えるほど汚い外観。今のところいい所を上げるほうが難しい旅館でした。私たちは、「料理がいい良かったり温泉が良かったりするんだよ」とポジティブに考える事にしました。

しかし、ポジティブはそう長くはもちませんでした。なぜなら、旅館内部はさらにひどい状態でした。廊下は掃除が行き届いていない感じではじの方にホコリが溜まっていました。壁もひび割れが多く、歩くたびに「ギィギィ」と軋む廊下。望みの一つであった温泉は使用停止になっていて、いい所が全く見つけられませんでした。ですが、私は友人に「まだ料理がいいに決まってる!」と最後の望みにかけました。

しかし料理は、海の幸や山の幸という感じではなくレトルト的な出来あい料理という感じでマイナス面しか感じられませんでした。

友人の一人が「こうなったらお酒を飲んではしゃぐしかない!」と言い出し売店にお酒を買いに行きました。私は売店から戻ってきた友人に「他のお客の迷惑にならない様にしないとね」というと友人は笑いながら「今この旅館に宿泊してるのウチラだけみたいだよ」というのです。まさかと思い玄関先にある宿泊歓迎の看板を見に行くとそこには私たちのグループ名しかありませんでした。

ここで完全にハズレ宿を引いたと思いました。評判が悪いから客が来ない、だから予約が出来た。そう考えると、最悪な気分でした。しかし、友人の提案通りお酒を飲んでその夜を過ごしました。

だいぶお酒が進んだ深夜に友人があることに気付きました。それは、備品として置かれているツボの様なものの中に硬貨がたくさん入っているのです。友人は、そのことに気付いてツボの中の硬貨を全部出してしまいました。硬貨の大半は100円以下でしたが、中には500円硬貨もあり友人は「返金ありがとうございます」といい全ての500円玉を鞄に入れてしまいました。

東北観光をしていると、何かと友人がお金を払ってくれることに気付きました。
私はその友人に「そんなに奢ってどうしたの?」と聞くと友人はニヤッと笑いながら「昨日の500円玉で払ってるから」というのです。私は、「それはまずいって」と言ったのですが、ハズレ宿なんだからという言い訳にならない言い訳でポンポンと500円玉で支払いしていきました。

すると、その友人はだんだんと体調を悪くしていき友人は「昨日、お酒飲み過ぎたせいかな」といい一人で早めに例の宿に戻る事にしました。
私たちは他にも観光しましたが、先に戻った友人が気になり予定を切り上げて宿に戻る事にしました。旅館には昨日以上に従業員が見当たりませんでした。

そして、部屋に戻ると友人は畳の上で震えながら寝ていました。私たちは、その光景にビックリしてすぐに布団をしいて寝かし、中居さんに話して体温計や氷枕などを用意してもらいました。

具合の悪い友人は「もしかして、感染症かもしれないからみんな別の部屋に行った方がいいかも」といいだしました。当時は、明確な感染原因も確立されておらず色んな憶測が流れていた時期だったのでどうしようか悩んでいました。

すると友人は壊れたおもちゃの様にカクカクと激しく痙攣をし始めました。すぐに、救急車を呼び友人は東北の病院に入院することになりました。

ひと段落着いて私たちは旅館に戻ってきました。そこで、友人の一人が重い口を開きました。「入院した友人(以下A)は500円を盗んだから罰が当たったのかな?」と話しました。すると違う友人も「その盗んだお金を使った私たちも同じ目に合うの?」とバチが当たるかもという恐怖が私たちを襲いました。

その夜も早めにお酒を飲んですぐに寝る事にしました。恐怖から逃げるにはお酒に限りますから…

そして、深夜の事です。廊下がきしむ音で目が覚めました。少しずつこちらに進んでくるきしむ音。しかし、この旅館には私たちしか宿泊していないのです。昨日確認したので間違いありません。そして深夜に飛び込みでこんな山の中の旅館に来るとも考えられません。

そんな事を考えていたら、軋む足音は私たちの部屋の前まで来ていました。私がみんなを起こそうとした時です。今まで感じた事のない寒気に襲われ、さらに金縛りに合いました。

友人を起こすにも声も出せないし体も動かない、しかし目だけは動くのです。軋む廊下を見つめながらAの身に起こったようなことが起こらないことを祈っていました。しかし、「スーッ」と私たちの部屋の襖が開いた音がしました。
眼をつぶろうとした時です。背後から「ユルサナイ」と声が聞こえ恐怖すぎて意識を失いました。

気が付くと朝になっていました。私は昨晩の事を友人に話そうと「昨日の夜中なんだけど…」と言いかけた時に友人は遮るように「その話はやめておこう」といいました。

旅館から出て帰りの電車の中で、私の話を遮った友人が「昨日の夜の事…私も体験した。あなたの後ろには大人の女性がいたの…で、私の後ろからは子供の男の子が『タスケテ』って声がして私も意識を失ったの」っと話してくれました。

痙攣をして倒れたAはその後、神経内科に定期的に通院することになりました。そして私たち全員が定期的に悪夢にうなされる事になりました。もちろん夢に現れるのは母親と男の子です。

私たちが泊まった旅館はすぐに閉館し、歴史など硬貨の事も調べましたが、何もわかりませんでした。ただ、あのツボは賽銭箱のような役割だったような気がします。なので、賽銭泥棒をしたAと仲間の私たちは呪いの様な物がかかったんだと思っています。

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