告別式での見えない何か
投稿者:めばちこ (5)
10年以上前の話になります。伯父が亡くなり当時2歳だった我が子を連れ告別式に参列する事になりました。
経験した事のない雰囲気に、初めはおとなしかった我が子も、皆に優しくされ場の雰囲気にも慣れてきて段々と調子に乗り徐々に本領発揮し
お坊さんが、お経を読み始めた頃には、部屋を出なければいけない程の騒がしさになっていました。
部屋の外に出された私達は、居場所もなく子供と斎場の中をウロウロしていると係員の人が「どうされました?」と声を掛けてきてくれました。
事情を説明すると「そうなんですね。良かったら、お経が終わるまでこの部屋を使って頂いて構いませんよ。」とテレビのある広い部屋に案内してくれました。
居場所のない私達は有難く使わせて頂く事にしたのですが、広いからなのか冬だからなのか入った瞬間どこか冷っとしたような嫌な感じがしました。
そんな気持ちなんてどこふく風で
誰もいない広い部屋で、自由に走り回ったりテレビを見たりして、大はしゃぎで喜んでいる我が子を見て、あのまま部屋にいたら皆に迷惑をかけるだけだし、この部屋を貸して貰えて本当に助かった。と一息ついた時、さっきまで、楽しそうにキャーキャー言いながら遊んでいた我が子が突然「ママ、この部屋イヤ、出たい。」と言いだしました。
私は、いつもの我がままだと思い
「伯父ちゃんに、お経が聞こえないと天国に行けなくなっちゃうから、お経が終わるまでは、この部屋にないとダメなんだよ。テレビでも見て、もう少し我慢しようね。」と
なだめたのですが「イヤだ、このお部屋はイヤなの。出る。もう、お家に帰る。」の一点張りで、あまりにもうるさいので1度、部屋を出て告別式の様子が流れている
モニターがあるロビーに一緒に行き
「ほらね。まだお坊さんが、お経を読んでるでしょ。伯父ちゃんも天国に行ってる途中だよ。きっと、もう少しで終わるから伯父ちゃんが天国につくまで部屋に戻って良い子にして待ってようね。」と言い嫌がる我が子を無理矢理、抱っこして部屋に戻ったのですが
部屋に入るなり「イヤだ、出たい。ここはイヤ」の連呼でどうにもならないので、我が子の大好きな追いかけっこをしたら落ち着くのではないかと思い
「ママと追いかけっこをしよう。」と言って追いかけようとする素振りをしてみました。
普段なら喜んで一目散に逃げて行くのに泣きそうな顔をして「イヤ、追いかけっこしたくない。帰りたいの。ママ抱っこして、ママ抱っこして」としがみついてくるのです。普段、歩き疲れたり凄く眠くならない限り、こんなにも抱っこなんて言った事がないし、大好きな追いかけっこをやらないなんて初めての事で、抱きかかえられたまま私の胸に顔をうずめ何かに怯えている様な感じにも見え話かけても話をしようともしない。
明らかに様子がおかしい我が子を見て最初にこの部屋に入った時の違和感を思いだし、私もなんとなく怖くなり
「大丈夫だよ。もう外に出ようね。この部屋から出て、モニターのあるロビーで追いかけっこをして遊ぼうか。」と言いました。
すると顔を上げ「うん、そうする。早く行こう。早く、早く。」と嬉しそうに言う我が子を見て少しホッとしながら我が子をおろし椅子の上に置いてあるバックを取ろうと
手を伸ばした時、手首に付けていた数珠のゴムが切れバラバラになって床に落ちていったのです。
突然の事だったので、えっ何、何か落ちたよね?何気に自分の手首を見て、あれ数珠が無い。数珠が切れたの。えっ何で。
数珠は古くもないし、ゴムの部分が伸びていたわけでもない。何かに引っ掛かけたわけでもないから自然に切れるなんてあり得ない。
一瞬で血の気が引くのがわかりました。もしかして、この部屋、見えない何かがいるの。まさか我が子が、この部屋を出たがっている理由ってそれなのかな。
怯えている様に感じたって事は、何か怖い物、者?がいるんじゃない。見えないから余計に怖い。自分でも意味の分からない恐怖を感じ頭の中がパニック状態に。
「ママ、ママ、早く出ようよ」と言う声に我に返り「うん、そうだよね。早く出ようね。」と冷静をよそおい急いで落ちた数珠を拾い部屋を出ようしたその時、
「バイバーイ」と嬉しそうに誰もいない部屋の奥の少し高くなっている場所に向って我が子が手を振っているのです。
えっえっえっ誰もいないんですけど。誰にバイバイして手なんて振ってるの?心臓はドキドキを通り越して飛び出てくるんじゃないかと思うぐらいドックンドックンしていて
震える手で、嬉しそうに手を振る我が子を必死に抱き上げ、猛ダッシュで部屋を出ました。部屋から出て嬉しそうに遊んでいる我が子を見ながら頭の中はパニックのまま
しばらくして、読経を終えた、お坊さんが出てきたので、頭の中の整理がつかないまま、今さっきあった出来事を伝えました。
全て話し終えた後、お坊さんが「私が、その数珠を持って帰り、しっかり供養いたしますので心配しなくて大丈夫です。」と言ってくださったので、その場で、バラバラになった数珠を渡し、お願いする事にしました。後から聞いた話なのですが、我が子をが手を振っていた場所は、亡くなった人を安置しておく場所だったみたいです。
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