仕事で付き合いのあるE美さんから聞いた話です。
彼女の実家は、田んぼに囲まれており、
高校への通学路は、そのほとんどが農道でした。
舗装されていないところも多く、雨の日は大変でした。
遠回りすれば、舗装した道路もあるのですが、
時間の貴重さには変えられません。
ある日、部活動で遅くなり、家路を急いでいました。
しとしとと嫌な雨が降っていて、薄暗く、陰気な雰囲気でした。
泥濘と水溜りだらけの農道を歩くのは、気が進まなかったのですが、
遠回りして、余計に時間が遅くなるのも嫌だったので、農道を選びました。
誰もいない農道を、泥が跳ねないように、水溜りを避けて、うつむき加減に歩いていると、
いつのまにか、後ろからざくざくという足音が聞こえてきました。
あれ、いつの間に? と思いつつ、ちらりと傘越しに背後を窺うと、
長い茶色のロングスカートに、白いハイヒールだけが見えました。
相手が女性ということで少し安心し、こんな足元の悪い道を、ハイヒールなんて気の毒だな、と思いました。
そのうち足音が近づいてきて、ほとんど真後ろを歩いているような形になったのです。
あまり広い道ではありませんでしたが、追い抜くくらいの幅はあります。
追い抜いていけばいいのに……傘が邪魔なのかな、と、思ったE美さんは少し端へ寄りましたが、
相手の女性は、斜め後ろを、歩調を合わせたように歩いています。
少し気味が悪くなり、思い切って、お先にどうぞ、と立ち止まろうとした時です。
傘の陰から、ぬうっと、女性がE美さんの顔を覗き込んできたのです。
長い黒髪、真っ白な顔、細く吊り上がった目に、真っ赤な口紅。
その顔は、まったくの無表情だったと言います。
E美さんは悲鳴をあげて、傘を取り落としながら、後ろへ飛び退きました。
しかし次の瞬間には、女性の姿はどこにもありませんでした。
振り返ると、ぬかるんだ農道にはE美さんの足跡しかついていません。
E美さんは、それから帰りが遅くなったり、雨が降っている時は、
農道を使わずに遠回りするようになったと言います。
「今もあの女の人の顔が忘れられないんですよねえ……まるでマネキンみたいでした」
E美さんは寒そうに肩をすぼめて言いました。
彼女の実家は、田んぼに囲まれており、
高校への通学路は、そのほとんどが農道でした。
舗装されていないところも多く、雨の日は大変でした。
遠回りすれば、舗装した道路もあるのですが、
時間の貴重さには変えられません。
ある日、部活動で遅くなり、家路を急いでいました。
しとしとと嫌な雨が降っていて、薄暗く、陰気な雰囲気でした。
泥濘と水溜りだらけの農道を歩くのは、気が進まなかったのですが、
遠回りして、余計に時間が遅くなるのも嫌だったので、農道を選びました。
誰もいない農道を、泥が跳ねないように、水溜りを避けて、うつむき加減に歩いていると、
いつのまにか、後ろからざくざくという足音が聞こえてきました。
あれ、いつの間に? と思いつつ、ちらりと傘越しに背後を窺うと、
長い茶色のロングスカートに、白いハイヒールだけが見えました。
相手が女性ということで少し安心し、こんな足元の悪い道を、ハイヒールなんて気の毒だな、と思いました。
そのうち足音が近づいてきて、ほとんど真後ろを歩いているような形になったのです。
あまり広い道ではありませんでしたが、追い抜くくらいの幅はあります。
追い抜いていけばいいのに……傘が邪魔なのかな、と、思ったE美さんは少し端へ寄りましたが、
相手の女性は、斜め後ろを、歩調を合わせたように歩いています。
少し気味が悪くなり、思い切って、お先にどうぞ、と立ち止まろうとした時です。
傘の陰から、ぬうっと、女性がE美さんの顔を覗き込んできたのです。
長い黒髪、真っ白な顔、細く吊り上がった目に、真っ赤な口紅。
その顔は、まったくの無表情だったと言います。
E美さんは悲鳴をあげて、傘を取り落としながら、後ろへ飛び退きました。
しかし次の瞬間には、女性の姿はどこにもありませんでした。
振り返ると、ぬかるんだ農道にはE美さんの足跡しかついていません。
E美さんは、それから帰りが遅くなったり、雨が降っている時は、
農道を使わずに遠回りするようになったと言います。
「今もあの女の人の顔が忘れられないんですよねえ……まるでマネキンみたいでした」
E美さんは寒そうに肩をすぼめて言いました。
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