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心霊

GENGOさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

工場には出ない
長編 2021/08/03 17:40 8,913view
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趣味を通じて知り合ったAから聞いた話。

Aが新卒で採用された会社は、そこそこ大きな会社だった。
本社勤務で入社したAだったが、入社直後に新人研修として一週間、
地方の工場に行くことになった。
一応はAの会社とは別企業だが、同じグループ内の
協力会社という関係の工場へ。
その研修に行くことが決定した時、Aは気乗りがしなかった。

まず、その工場がかなりの遠方のいわゆる僻地にあるから。
だがまだこれは、行って見なければわからない面はある。
もう一つの気乗りしない理由は、その工場には幽霊が出るという噂を
先輩社員から聞かされたから。

Aは幽霊の存在を信じてはおらず、なのでさほど怖いとは思わなかった。
だが幽霊が実際に出るかどうか以前に、幽霊が出るなどと噂のあるところなど
古臭くて汚い工場なのだろうというイメージしかわかない。
はるかかなたの僻地にある汚いであろう工場。
そこに行けといわれて気分が良いハズもない。
しかもこの研修期間中、Aは工場内の宿泊室にて
寝起きすることになるというのだ。
Aは憂鬱な気分で現地へと向かった。

工場の最寄駅で、研修中の指導担当者となる
K専務に出迎えてもらい、K専務の車で工場へ向かった。
到着してみると工場も宿泊室も予想より遥かに綺麗だった。

工場は海に面した工業団地の中の一角にあった。
工業団地そのものが以前は防風林の松林だったそうで、
数年前に防風林の半分程度を伐採し整地し、
造成して出来たもので、全体的に新しいのだという。
工場内の設備も綺麗、肝心の宿泊室も行き届いていて、
さほど広くはないがテレビやベッドなども整っていた。
社員食堂やシャワー室が隣接しているが、煩いということもない。
社食は調理人が昼しかいないので、朝食夕食はは特別に
作り置きして貰った品を食べるしかなかったが、海の近くだからだろうか、
海産物中心の料理は冷めていても十分に美味しかった。
食事や寝起きの都合に関しては、都会の日常よりむしろ快適な程だった。

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