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心霊

すだれさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

吊り下がる怪
長編 2023/04/09 20:08 3,132view
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「高校の時にさ、年甲斐もなく七不思議みたいなのを調べた時期があったんだ」

駅に車で送ってもらう途中だった。運転席の友人は前を向いたまま続ける。友人は此方とは別の高校の出身で、隣町の彼の高校は確か当時入学3年前に合併してできた新設校だったな、と頭の中で補足した。

「合併したって言っても校舎は元々建ってたのをそのまま使ってたな」
「合併した片方の高校が農業系だったから、専門科が使う設備がすでに整った校舎を引き継いだ形か」
「そうそう。だから高校の名前と制服のデザインが変わって、学科がちょっと増えたくらいで校舎は古いまんまだった」

友人はそんな校舎や学校の雰囲気に触発され、七不思議を調べたのだという。気持ちは分からなくもない。使い古された建物や設備、そういった物からは新築のそれからは感じ取れない趣きが漂う。壁のキズ、床のシミ、それだけで「ここで昔何が起きたのだろう」と、好奇心とともに思考が巡る。自分がその高校に通っていたなら全く同じことをしていたと思う。

「実際、七不思議っぽい話はまったく無かったよ。トイレに花子さんはいなかったし、化学室の骨は動かなかった」
「七不思議のような怪談話は、発祥元である噂の他に『口承する者』が必要だからな」

「その噂を広めて回る人間がいるってこと?」

「花子さん然り、動く骨然り、怪異と呼ばれる存在は口承及び伝承の影響を如実に受ける。誰1人認知していなければそれは存在していないのと同義だし、逆に全校生徒が知っていれば確実にその学校には存在する。…話の中で花子さんが廊下を闊歩していれば彼女は校舎中を歩き回れるだろうし、羽が生えていたと伝播すればあるいは空を飛ぶ花子さんだって存在できる」

「空飛ぶ花子さんやべぇな」
「極端な仮定だ。だからそういった怪異は話が伝播しやすい…『口承する者』が多い小学校なんかの方が散見する傾向はある」

「ああ~こういう話は確かに高校生より小学生とかの方が噂するもんな…」
「…しかし、君はさっき七不思議のような話『は』無かったと言ったが?」
「うん。そう」

それがこれから話すヤツ。
ハンドルを握り直しながら友人は語り出す。目的地である駅はまだ遠い。

友人が七不思議を調べ始めたのは高校2年生の時だった。

「最初は先生とかに話を聞きに行ってた。合併する前からこの校舎で働いてる先生とかなら何か噂話とか知ってるかなって」
「なるほど」
「でもあんまり有力な情報は無かったんだよな。『そういうのに興味持つのは全然いいけどお前ちゃんと課題提出しろよ』って諭された時もあった」
「先生も、準備室をわざわざ訪ねてきた生徒の目的が授業の疑問点ではなく怪談話の聞き込みだったら思わず頭を抱えるだろうな」

目ぼしい成果が得られなかった友人は次にクラスの親しい生徒に頼んで、部活や学科繋がりの1学年上の先輩に話を聞いて回った。こちらはあまり期待はできなかった。当時の3年生も自分たち同様、合併後に入学した世代なので。
しかし、

「美術部の友だちの先輩が、そのまた上の先輩から聞いた話があった」
「先輩の先輩というと…ギリギリ合併前の世代か…?」
「なんか歴代の美術部員が後輩たちに言って聞かせる話なんだと」
「…その話の内容は?」
「美術室にまつわる話」

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