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心霊

にゃん某さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

平和記念資料館にて
短編 2023/04/02 09:29 1,212view

これは、私の職場の先輩が体験した話です。

先輩が小学生だった頃、両親と祖母と共に平和記念資料館へ行ったそうです。そこには、戦時中の記録が書かれた物や、当時の写真や映像などの資料が多くありました。

初めて訪れた先輩は、その残酷な内容にとても衝撃を受けたと言います。その記念館の中で、先輩は忘れられない体験をしたそうです。

記念館の中のとある敷地内に、当時住民が隠れるのに利用していた防空壕を再現したジオラマがありました。中に入ると、避難している人々の様子が忠実に再現されていました。ごつごつした土の壁などもとてもリアルです。

暫くすると、「ウウーーーーー」というサイレンの音が防空壕内に響き渡りました。

あまりにも大きい音でとても驚いてしまい、すぐに辺りを見渡しました。しかし、先輩以外の見学者は特に驚いた様子はありません。

すると、「ドカーーンドカーン!!」という爆弾のような音も聞こえ始めたのです。こちらもサイレンと同様、かなりの音でした。ですが、やはり自分以外の人々は何ら変わった様子はなく、そのまま静かに見学をしています。

耐え切れなくなり、そばにいた母親に飛びつきました。母親は、〇〇ちゃん急にどうしたの?と驚いています。ただならぬ先輩の様子に気付き、母親はすぐに先輩の手を引いて外に出ました。

今あった恐ろしい出来事を話すと、母親は顔をしかめました。「そんな音、お母さんは聞こえなかったよ。」と言うのです。「でも、本当に聞こえたんだよ。」先輩は必死に訴えます。

ふと、今出てきた防空壕の出口を振り返りました。すると、そこには先輩と同じくらいの背丈をした女の子が立っており、こちらを見ていたのです。おかっぱ頭で、白いぼろぼろの服を着ています。

明らかにおかしいということが、まだ幼い先輩にもすぐに分かりました。先輩はあまりの恐怖に目を閉じ、「お母さん!!あそこに女の子が!」と大声で母親に訴えます。

すると母親はすぐに防空壕の中に戻って行きました。しかし、再度出口から出てきた母親は「女の子なんていないよ」と言うのです。

「見てきたけど、今は大人の人しか中にいなかったよ?○○ちゃんの見間違いじゃない?」そう言われ、先輩は納得がいきませんでしたが、怖さのせいで何も言えなかったそうです。

それから約10年が経ち、先輩はホラー物が大好きな高校生になっていました。心霊番組は必ずチェックし、家族や友人と語るのが日々の楽しみだったそうです。

そんなある日、近くの書店を訪れた先輩は、ある本を目にします。それは、地元の心霊体験が掲載されている本でした。著者が、心霊体験を持っている地元民に調査をし、それを一つの書籍にまとめたものです。

地元の心霊話?面白そう!と思い、すぐに手に取り、さっそく中を開いてみました。すると、あるページに目が止まりました。背中の辺りがゾワッとするのを感じます。

そこには「平和記念資料館で…防空壕の中…」という文字が書かれていたのです。暫く読み進め、衝撃を受けました。その体験談は、防空壕の中に入るとサイレンや爆弾の大きな音が聞こえた。しかし他の人には聞こえておらず、怖かった。といった内容でした。

あの日の記憶が鮮明に蘇ってきます。気になった先輩は、帰宅するなりインターネットであの資料館について調べました。すると驚くことに、自分や先ほど読んだ本の体験者のように、あの防空壕内で本来鳴っていないはずの爆音が聞こえた、といった内容が数件載っていたのです。

資料館についてさらに詳しく調べると、「夜になると首吊りの霊が現れる」「トイレで黒い影が通るのが見える」「息苦しく、気分が悪くなる」といった現象が起こっていることが分かりました。

私と先輩の地元は、当時激戦地となっていた場所です。住民たちは、絶壁から身を投げ出すこともあったそうです。

また防空壕内では、多くの兵士や女性、子供たちが集団自決をしたという記録も多く残っています。平和記念資料館がある場所でも、まさにこのような痛々しい出来事が起きていたのです。

その時に犠牲となってしまった人々の霊が、未だにこの場所を彷徨っているのかもしれません。

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