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心霊

並の大盛りさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

愛犬のマルと山奥の廃墟
長編 2023/03/08 15:31 4,367view
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俺は愛犬のマルを連れてよく地元から離れた山道(舗装されてる)なんかを散歩することがあった。
車通りが無くて空気が澄んだ場所が好きなのか、マルは街中よりかはそういった自然に囲まれた場所の方が活き活きするんだ。

その日も土曜の朝早くから「マルー、散歩いくぞー」と言えば、マルは嬉しそうに息を吐いて俺の足回りをグルグルと回る。
ただの柴犬なんだが、喜んでいる時に顔を揉んでやると目を細めて笑ってるみたいに見えて可愛い。

「じゃあ、行ってくるー」

俺は家族にそう告げてマルと出かけた。

始めはやっぱり楽しいのかぴょんぴょんと駆け出すマルに引っ張られるように俺も早足でアスファルトを蹴り上げるんだが、数分もしない内に息切れを起こして「ま、マル、もうちょい、ゆっくり」と、体力の無さを悔やむ。
でもマルはいつも俺の近くにも戻ってきては『大丈夫か?』みたいな顔して見上げてくる。
そして頭を撫でてやると俺の足並みに合わせるように散歩を再開するのだから、たまらん。

それでこの日はいつもと同じ舗装された山道を歩いてたんだけど、急にマルが『ハッハッハッ』と息を上げて、ちょっとした小道?に入っていった。

獣道というより、ちょっとした参道のように草が生えていない誰かが整地したような土道。
急にマルが勢いよく駆け出したものだから、軽く握ってたリードを放してしまい、マルは道路脇から林の中に伸びた土道の奥へとあっという間に消えて行った。

俺の実家は人里から少し離れた小高い山の麓にあるんだが、環境がそんなだから家の庭や周辺ではリードをつけないで遊ばせている事もあって、この時はそんなに心配していなかった。
いつものマルは数十メートル走った後はすぐに翻して飼い主の所へ戻ってくる。
もしかしてこの小道の奥にマルの興味を掻き立てた何かがあって、それに向かって走り出したのかもしれないが、すぐに戻ってくると思ってた。

それでもやっぱ普段立ち入った事がない場所となると不安になる。
俺もマルを追って小道に入ると、参道のように整地された道の奥には数センチの石段みたいなのが部分的に設置されてた。
この奥は誰かの私有地なのかもしれないと思った俺は、「マルー、戻っておいでー!」と声をあげる。
マルは躾けている方だが、外と認識していればトイレをする可能性はあるので、さすがに他所様の敷地内で糞なんかしたら後々面倒くさいと思った。

「マルー!」

小道は思ったより続いてて、軽く数百メートルは進んだと思う。
そんなに曲がりくねってはないが、緩やかに曲がり、緩やかに登る。
完全に外界から断たれたように密林の壁に周囲を覆われると、遭難したような錯覚に陥る。
まあ、整地された土道を戻れば山道の道路に繋がってるから迷子になることはないが、この山の中特有の静寂さはちょっと不気味だった。

しばらく道なりに進むと数メートルと高い金網フェンスが張り巡らされていた。
その奥には何かの施設なのか分からないけど、廃墟と化した小さなビルのような建物が聳えている。
所々風化していて、遠目からでも外壁が崩れ落ちて内装が丸見えになっている個所が分かるが、それよりも問題なのが、正面にある金網フェンスの入口らしき扉が人一人分ほど開いている事だった。

ご丁寧に『立入禁止』の板がフェンスの閂みたいな所にぶら下げられていたが、俺はマルがこの中に入っていったのだと直感的に思った。

完全に私有地だが、マルをこのまま放置するわけにもいかず、俺は「すみませーん、犬が入ったかもしれないんで入らせてもらいます」と声を出す。
人の気配は無いし、管理されているようにも見えないが、一応礼儀は尽くす。
体を横にして半開きのフェンスの入口を通り、枯葉なんかに埋め尽くされた広大な敷地内を歩いていくと、廃墟の裏側あたりから『ワンワン!』とマルの鳴き声が聞こえた。
普段はあまり吠えないマルだが、何かあったのかと思い、俺は走った。

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コメント(1)
  • 愛犬のマルに感謝ですね。

    2023/04/14/01:03

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