奇々怪々 お知らせ
           
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心霊

大切なもの
長編 2021/02/24 00:05 3,111view
人が死ねば、物が残る。
遺品整理の仕事をしていると、それが身にしみる。
ある日、遺品の買い取りをして欲しいとの依頼を受けて、都内にあるMさんのお宅を訪れた。

遺品の整理を始める。家電や家具は、私が勤務する会社が運営している系列のリサイクルショップへ。貴金属はそれ専門の業者へ。値が付かない買い手が付かない日用雑貨の類はもったいないが廃棄処分する。
整理をしていると、文机の引き出しから指輪が見つかった。特に綺麗な色合いではない黒っぽい石がはめ込まれた指輪。祭りの夜店で売っていそうなチープな一品だ。これは貴金属店では買い取ってくれないだろう。捨てるしかないか。
そう思って不用品袋に入れようとした時、「それ、気になるな」と言って上司のAが指輪をひょいとつまみ上げた。
「これ、売り物にはならねえよな。俺が貰っておくよ」
あろうことか、Aはその安物の指輪を自分のポケットに滑り込ませた。Aはよく他人の遺品をネコババする。ヤメてほしいのだが、強く注意できない。Aは私の上司である上に、社長の甥っ子にあたる。だから、「それ泥棒ですよ」とは悔しいが指摘できないのだ。

今日の仕事が終わり、帰宅する。カバンの中から荷物を出していると、ありえない物が出てきた。 Aがネコババした例の指輪だった。
(Aがポケットに仕舞った物がなぜここに?)
不思議だったが、それほど気にせずその日は眠りについた。
夜、目が覚める。金縛り、首から下がまるで動かせない。目は動く。枕元で何か気配がしたので、そちらを見ると長い髪の女が立っていた。
長い髪の女が私の顔をのぞきこむ。鼻の欠けた顔、獣のような瞳、歯の無い真っ黒な口。およそ人間とは思えないような面相。さらに異常だったのが、顔の両側にさらに2つの顔がくっ付いていたことだ。
「阿修羅像」と説明すれば伝わるだろうか?昔、奈良の興福寺で見た阿修羅像のように顔が三面あるのだ。三面ある顔全てが、私の方を見ていた。
「チガう……チガう……」
顔が三面ある女はそうつぶやくと、スウッと煙のようにかき消えた。

その不気味な女の霊?を見た翌日以降、不思議な現象は特に起きていない。指輪はMさんの親族に後日、お返しした。
私はまたいつも通りに遺品整理の仕事に励む。今日の業務は、遺品供養をしてもらう品物をまとめて××寺へ持っていくことだ。故人が残したひな人形や五月人形、ぬいぐるみ、お面や人をモチーフにした絵画。そういった人を形どった物をただ廃棄するのは気分が悪い。だから簡単な供養をお寺さんにしてもらう。
段ボールに詰めた供養品を寺のお坊さんに引き渡す。これまで、もう何度も供養を頼んでいる顔なじみのお坊さんだ。
だが、お坊さんの様子がおかしい。私の顔をチラチラ見てくる。しかも「あー」とか「うーん」とか意味深な声を出している。
「何か……何か、おかしな現場行った?遺品整理の……」
首を傾げながら、お坊さんが聞いてくる。私は「特に心辺りはない」と答えた。
「じゃあ、あれか。この中か。供養品の中に何か混ざってるな、これは。なんだろな」
お坊さんはおもむろに段ボールの中に手を突っ込み、ガサガサと中を探り始めた。
「ああ、これか」と言って段ボールの中からお坊さんが出したものは、案の定、あの指輪だった。
「別に怖いものじゃないよ。それに、わしらの業界で有名な指輪だよこれは」
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