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ヒトコワ

とくのしんさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

仮面男
短編 2022/09/02 11:35 3,135view
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お袋が中学生の頃、学校の近くに火葬場があった。
当時は今と違い、火葬があると何となく”人を焼いたそれっぽい臭い”がしたそうだ。なので火葬があった日は「教室に臭いが入ってくる」といって窓を閉め切りにしたとか。そんな火葬場はやはり不気味な存在だったようで、怖がりなお袋からすると聳え立つ煙突の気味の悪さが苦手だったそうだ。

ある日のこと、時間を忘れて遊んでいたところすっかり日が暮れてしまった。俺の祖母、つまりお袋の母ちゃんはそれはそれはおっかない人で、THE・昭和という表現が当てはまろう。門限破ろうものなら娘であろうと箒の柄で頭をひっぱたくなんてことは日常茶飯事。祖母の叱責に怯えたお袋は慌てて帰路に着いた。

一刻も早く帰宅したいお袋は火葬場の横の抜け道を通るか迷った。そこを通ると大通りに出るよりも10分以上短縮できるのだが、その道はただでさえ薄暗く火葬場の横ということもあって不気味。少し前に友人とエクソシストというホラー映画の代名詞ともいえる作品を観たこともあって、それを唐突に思い出したお袋はその道を通るか迷いに迷った。道の不気味さより、祖母のお仕置きが怖いと自身の天秤がそう伝えたこともあって、抜け道を通ることにした。

お袋は全速力で自転車を漕いでその道を抜けようとした。暗がりの中、空を見上げると黒く高い煙突が普段よりも不気味に感じた。恐怖を押し殺しながら道の真ん中まで辿りついたときだった。

ガクン

急に自転車が急停止した。お袋は前につんのめってハンドルに腹部を強打したが、何とかバランスを保って転倒は免れた。感覚的に何かを踏んだとかそういうものではなく、伝わってきたのは何者かが荷台を掴んで自転車を停めたような不気味な力感。その伝わってきた妙な力感に対するお袋の見立ては見事的中する。後ろを振り返るとそこにいたのは

仮面を被った奇妙な何者かだった。

お祭りの屋台で売っているような仮面ライダーとかウルトラマンとか、そういった類のお面を被った男が自転車の荷台を両手で掴んでいた。上半身はランニング一枚に風呂敷を首に巻き、下半身はパンツ一枚。無言を貫く仮面男は明らかに異常者だった。

キャー!ではなく、ギャー!という悲鳴を上げたお袋は自転車を置き去りにして走って逃げた。振り返ると自転車を掴んだまま動かない仮面男が外灯に照らされて立ち尽くしている。追いかけてくる気配はなかったそうだ。
急いで帰宅したお袋を激高した祖母が待ち受けていたが、お袋の慌てふためく様子に只事ではないと騒ぎだす。事情を説明すると警察への通報よりも先に箒を持って現場に急行。お袋も後を追っていった。

現場に到着するも仮面男の姿はなく、お袋の自転車が無残にも倒れた状態で置き去りにされていた。近所の人も出てきたが、そのような仮面男は見たことがないということだった。

お袋は無事だったが、そもそも遅くまで遊び惚けるからこういう目に合うんだと祖母にこっぴどく叱られた。以来、なるべく門限は守るようになったとか。

ちなみに仮面男が被っていたお面は仮面ライダーだったそうだ。世の中には不気味なライダーがいるもんだと、その話を聞いて思った。

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コメント(1)
  • 結局変質者だった…?それとも幽霊的な存在?
    火葬場とは何か関係があるのでしょうか。
    どう怖がれば良いのかわかりませんでした😅

    2022/09/04/17:34

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