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心霊

猩々さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

看護師の正体
短編 2021/12/07 20:51 22,918view
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病院は広い。病室なんて何部屋もある。その部屋を、ひとつひとつ中まで入って、さらに一人一人ベッドの前まで見て回るだろうか?数百人はいる患者を、全部?

気がついてしまうと、Tくんは急に心臓がドキドキしてきた。

なぜ、自分はこの足音を看護師さんのものだと思ったのだろう?

姿は見ていないのに?

今この瞬間まで、何の疑いもなくそう思っていた。

でも、本当に看護師さんなのだろうか?

Tくんが布団の中で動けなくなっていると、カツカツカツ……という足音が、Tくんのカーテンの前で止まった。

うわっ。いま、そこにいる。

Tくんは恐る恐る、【ソレ】がいる方に目を向けた。

カーテンの向こうに、ぼんやりと人影が浮かんでいる。

この期に及んで、Tくんには【ソレ】が、ナース服を着た看護師さんに思えたらしい。

相変わらず、影しか見えていないのに。

あれ?もしかして本当に看護師さんなのかな?と、根拠もなく思い直しそうになった。

しかし、その時Tくんは、なんとなくカーテンの下を見た。

床とカーテンの数十センチの隙間に、【ソレ】の足元が覗いていた。

その瞬間、Tくんは【ソレ】が、決して看護師さんなんかではないと確信した。

と、同時に、

「Tさん、起きてらっしゃいますかー?」

カーテンの向こうから、優しい若い女性の声が聞こえてきた。

まるで、看護師さんが話しかけてくるような口調だった。

Tくんが息を飲むと、続け様に、

「体調お変わりないですかー。」

と、また優しく問いかけてくる。

「Tさん、痛いところがあったら遠慮なく言ってくださいねー。」
「Tさん、起きてらっしゃいますかー?」
「Tさん、お大事になさってくださいねー。」

まるで本物の看護師さんのような口ぶりで【ソレ】は何度か話しかけてきたが、Tくんが頑なに返事をせず、じっとしていると、プツッと声は途切れてしまった。

そのまま、足音も、部屋を出ていく気配も何もないまま、しーんと静まり返り、気がつくと朝になっていたらしい。

翌朝、Tくんが青い顔でいると、隣のベッドの患者さんが「どうしたんですか」と声をかけてくれた。

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関連タグ: #声#実体験#病院
コメント(10)
  • こええ

    2021/12/07/23:48
  • ゾッとしました……

    2021/12/11/22:41
  • 四ヶ月入院してたけど、夜の見廻りは有るよ。しかも覗いてくるよ。

    2021/12/13/15:37
  • >四ヶ月入院してたけど、夜の見廻りは有るよ。しかも覗いてくるよ。

    黒いヒールで…?

    2021/12/13/18:16
  • 懐中電灯ポケットに入れて患者が生きてるかどうか見回りはしますね。

    2022/01/27/22:01
  • 返事をしたらどうなってしまうのか

    2022/04/02/06:23
  • 獣の足とかじゃなくて真っ黒なヒールなのがクソ怖い

    2022/04/02/23:44
  • おっかねぇ

    2022/06/24/16:21
  • 寝てる間に体温はかられることもあるわ

    2023/02/01/21:57
  • なぜ看護婦さんのふりをするのでしょう?怖がらせない為?油断させる為?

    2023/05/13/09:19

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