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不思議体験

adoooさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

世話になったな
短編 2021/12/05 19:20 1,255view
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私が小学校低学年くらいの短い一時期の話です。

それは決まって、夜が明けるかどうかというくらいの薄暗い時間のことでした。「わっ」と言って、私は目を覚まします。だれかに布団の中で左の足首を引っ張られるのです。体がずるっと足の方に引っ張られる感覚で私は目を覚まします。毎回、寝汗で額が湿っていました。

となりの布団では弟がギリギリとやかましく歯ぎしりを立てながら、のんきに眠っています。その日、枕もとの目覚まし時計は五時前くらいだったでしょうか。

「はあ」というため息が居間のほうから聞こえてきました。誰でしょう、父でしょうか。男性の声のように聞こえました。でも、そんなはずはありません。私と弟はこちらの部屋で寝ていますが、父、母、そしてまだ小さかった妹は居間を挟んで向かいの部屋で寝ていました。そしていま、向こうからいつも通り父の大きないびきが聞こえてきます。
まだ若くまるまると太っていた父の呼吸が、いびきの合間にときどき止まって息苦しそうにしているのまで聞こえてきます。それでは、あれはいったいだれのため息だったのでしょうか。

「はあ」とまたため息が聞こえて、コンという硬い音がしました。だれかがコーヒーを飲んで、カップをテーブルに置いたかのような…。母でしょうか。それもありえません。頭を少し動かして向こう側の寝室を見ると、父の足の裏と並んで、母の足の裏が見えています。「ゴホン」という咳払いまで聞こえてきました。この角度からでは寝ているかどうか確認できませんが、とても五歳の妹の声には聞こえません。

それ以上、特になにがあったというわけでもないのですが、なぜか明け方にコーヒーを飲むようなその音はときどき聞こえてきました。大方、当時亡くなったばかりの曽祖父が四十九日を前に最後にひ孫たちのようすでも見に来ていたのでしょう。

曽祖父は、亡くなる直前にも最後のコーヒーを祖母に淹れてもらって、ゆっくりとそれを味わった後に、「あんたにも世話になったな」と言い残して翌朝布団の中で冷たくなっていました。

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関連タグ: #四十九日#声#学校
コメント(1)
  • 亡くなられた時期がその日と同じ日だったのではないでしょうか?

    2021/12/07/01:23

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