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心霊

ひまわりさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

ただそこに居た
長編 2021/11/11 11:49 2,118view

西宮市で一人暮らしをしていたときの話です。

当時住んでいたアパートは、西宮市の主要駅から徒歩20分離れた、とても静かな場所にありました。
マンションの手前には田んぼが広がり、裏手には大きな川が流れていて、とても関西有数のベッドタウンとは思えない長閑さでした。
場所のせいもあってか、2階建のアパートは常に閑散としていて、果たして私以外の住人がいるのか?と疑問になるほどの静けさでした。

そこに住み始めて最初の秋、地元から友達が遊びに来ました。彼女は物心つく前に両親が離婚し、父親の顔も知らずに育ったそうです。
ただ一つ父について知っていることといえば、どこか大きな寺の住職だということくらいでした。

そんな父親の血が関係しているのかどうかは分かりませんが、昔から彼女と一緒にいると、よく不思議なことが起こりました。

たとえば運転免許を取ってすぐの頃、二人で夜道をドライブしているうちに、どこかの山道に入り込んでしまいました。
ナビを確認すると、細い一本道が山を突っ切るように通っていて、そのまま真っすぐ走れば大きな国道に出られるようです。

なので何の心配もなく真っ暗な山道を走り続けたのですが、走れども走れども出口にたどり着けない。

もう一度ナビを確認すると、小一時間も走っていたのに、先程見た場所から全く移動していないようでした。

「やっぱりこうなったかぁ…」と彼女はぶつぶつ言いながら、急に車を停止させ、そのままバックで片道を引き返し始めました。

「危ないよ!」と止めようとする私に対し、「大丈夫、絶対に後続車なんか来んから。このままじゃ朝まで出られんくなる」と言い切る彼女。

結局、バックで山を降り始めてからたった数分で、車は無事に麓の道に出ることができました。

彼女といると何度かこういう不思議なことがありましたが、聞いても「上手く説明できん。でも、たまにこういうことがあるんよ」とケロッとした感じで言われるだけ。
私もあまり深く追求する気はなく、「生きてりゃ不思議なこともあるだろう」くらいで済ませていました。

さて、そんな彼女が遊びに来た日。
日中は神戸の街を観光し、アパートに戻ったのは夜遅くなってからでした。

その時点で特に変わったことはなく、私たちは交互にシャワーを浴びて、2時頃に布団に入りました。
秋風が涼しい夜だったので、ベランダのサッシを開け、網戸にして寝ました。普段は絶対にそんな不用心なことはしません。

でも、いつもと違って人が二人いるという安心感からか、それとも地元の友達がいることで田舎に帰った気にでもなっていたのでしょう。
網戸のまま寝るということを、なぜかほんの少しも疑問に思いませんでした。

眠りに落ちてからどれくらい経ったか分かりませんが、不意に目が覚めました。
部屋がうっすら明るくなっていたので、たぶん夜明け頃だったと思います。
何故だか妙な胸騒ぎがしました。
冷や汗をかいて、鼓動も速い。キーン!と激しい耳鳴りがしたかと思うと、急に体がずっしりと重くなり、全く動かすことができなくなりました。

私は眠りが浅いせいもあってか、普段からよく金縛りに遭います。
普段なら、多少の恐怖はあっても「またか」という感じなのですが、そのときはいつもと違っていました。

「ベランダに何か居る!!!ヤバい!!!」

別にベランダのほうを見たわけでもないし、音が聞こえたということもないのに、なぜか直感的にそう思いました。

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