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takasugiさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

母に届いた魂の叫び
短編 2021/11/12 07:54 1,032view

これは、今から約20年前の話です。
ある朝、それも早朝。
中学生だった私の部屋に母親が飛び込んできました。
いきなり何事かと思いきや「生きててよかった!」と泣き出すではありませんか。
全く意味がわからず困惑する私に母が話したのは、こんな夢の話でした。

私(息子)が乗った車が地元の陸橋(陸橋A)から落ちる様子を見たそうです。
落ちた車のドアが開き、転がり落ちるように出てきたのは、私がこよなく愛したウルトラマンでした。
あまりのショックで、私の名前を絶叫する母。
気が付くと涙が大量に流れ出ており、そこで目が覚めたというのです。

その時には「生きててよかった」ってそういう意味か、と納得し、家族が死ぬ夢を見るのはあまり気持ちが良くないけど、幸運が訪れる前触れって聞いたこともあるよねと二人で笑い合っていました。
母も「夢でもあれだけ感情が揺さぶられると涙が流れるんだね」と話し、単なる夢の話として一件落着するはずでした。

が、しかし、その後二人で朝食を食べながらテレビを見ていると、私たちの目に飛び込んできたのは、夜中に若者4人が乗った車が猛スピードで地元の陸橋Aを駆け上がり、ハンドル操作を誤ってそのまま数十メートル下の地面に転落し、全員が死亡したというニュースでした。
私たちは言葉を失ってしまいました。
若者、車が転落、陸橋A・・・。
完全に母が見た夢とシンクロしているではありませんか。
もちろん、母が話してくれた時点では私も母もこの事故のことを知る由もありません。
あまりにも偶然過ぎる偶然に、私は背筋が凍るような思いがしました。

その後、母と話していくうちに、きっとあれは亡くなった若者からのメッセージなのではないかと思いました。

若者たちは命がなくなる瞬間「お母さーーーん!!!」と心の奥底で叫んだのではないでしょうか。
私の母は昔から感受性が強かったと言っていましたから、きっとその魂からの叫びを心の電波で受信したのでしょう。
若者たちは、実の母に届けることのできない想いを最後の最後に私の母に託したのだと思います。
だから、母は夢で泣くほどまでに心を揺さぶられたのではないでしょうか。

幼い頃から心霊現象や亡くなった者からのお告げと言ったエピソードに懐疑的だった私ですが、この日を境に「こういうこともあるよね」と信じるようになりました。
果たしてそれがよかったのかどうかは今でもわかりません。
しかし、今でも母があの時見た夢は偶然とは思えません。
科学的には絶対に立証が出来ないでしょうが、人間の心からの叫びが離れた場所にいる赤の他人に伝わることがあるのだと痛感した出来事でした。
(尚、この母の夢や事故の内容は噂や創作ではなく、私の地元富山県で本当にあった出来事です)

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