死んだほうがいいよなぁ！

ギョッとして、彼女はKくんの方を向いた格好で固まった。
Kくんは目を閉じて眠っているような顔をしたまま、大きな声で、

「なあ！そうだよなあ！俺は！死んだ方が！いいよなぁあ？！」

と、まるで彼女に話しかけるように怒鳴った。
彼女が震え上がりながら、

「い、いいえ……」

と返事をすると、今度は、

「ギャッハハハッ！ギャハハハハハハ！！！！」

と狂ったような声で笑い出し、次の瞬間、

「良かったな」

と真顔で呟いたかと思うと、コテンと電池が切れたように眠りに落ちたという。
彼女はあまりのことに朝まで眠れなかったそうだ。

Kくんはちっとも記憶になかったので半信半疑だったが、後日、見晴らしのいい交差点で車とバイクがまともにぶつかる大事故を起こし、大怪我をしてしまった。
死んでいても、少しもおかしくなかったという。

「大事故に遭ったが、奇跡的に助かった」のか。
それとも、「死にはしないが、死ぬ一歩手前の目」に遭ったのか。

ともかくKくんは、それ以降お墓を蹴るような真似だけはしなくなったという。