奇々怪々 お知らせ

ヒトコワ

大猫さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

お母さんが見守ってくれてるの?
長編 2021/11/14 11:53 1,424view
数年前、Sさんという女性から聞いた話です。

Sさんの母親は、Sさんがまだ大学生の頃に、突然の事故で亡くなってしまったそうです。
Sさんは片親で、幼稚園児の頃からずっとお母さんと2人だけで暮らしてきました。
自分を育てるために、朝から晩まで何年も働き詰めだったお母さん。
父親がいなくなった時にはまだ若かっただろうに、Sさんを優先して、新しい恋も再婚もできなかったお母さん。
社会人になったら今までの分もたくさん親孝行をしようと思っていたのに、さよならも言えないままに亡くなってしまった。
予期せぬ母親の死に、Sさんは深くショックを受け、何ヶ月も落ち込んでいたそうです。

しかし、ある時Sさんは不思議なことに気がつきました。
Sさんがお母さんのことを思い出して落ち込んだり、泣いたりしているときに限って、奇妙なことが起きるのです。

例えば、家にはSさんしかいないはずなのに、コンコンと部屋のドアがノックされたり、
本棚にきちんと閉まっていた本が突然一冊だけドサッと床に落ちたり、
お風呂に入っているときに、蛇口を回していないのに勝手にシャワーが流れたり、
時計の針が急にぐるぐると逆向きに回ったりするのです。

一つ一つだけ見れば、偶然とか気のせいとか言えるような些細な出来事です。
しかし、それが何度も何度も、しかも必ずSさんがお母さんのことを思って泣いているときにばかり起こると、さすがに気のせいではないと思うようになりました。
次第にSさんは、この奇妙な現象は「お母さんが私のことを見守ってくれているんだ。落ち込んでばかりの私を励ましてくれているんだ。」と考えるようになり、
その現象が起きるたびに、

「お母さんごめんね。ありがとう。元気出すからね。」

と、母親にだけ聞こえるように、小さく呟くようになりました。

さて、そんな奇妙な現象が起きるようになって数年が経ち、Sさんも社会人になりました。
Sさんは就職を機に心機一転。新天地で一人暮らしを始め、一生懸命、元気に働くようになりました。
そんなSさんを見て惹かれるところがあったのでしょう。
会社の先輩にあたるAさんという男性が、Sさんに好意を持ち、アプローチをかけてきたそうです。
Sさんもまんざらではなかったのですが、あと一歩のところで、Aさんを受け入れる決心がつかずにいました。
ある日、SさんはAさんから誘いを受けて、2人で食事に出かけることになりました。
Aさんは優しくいい人で、なんとかSさんの気を引こうと色々と話を振ってくれます。
だんだんSさんも気持ちがほぐれてきて、食事と会話を楽しんでいたそうです。

「そういえば、Sさんのお父さんとお母さんはどんな人なの?」

Aさんが、何気なくSさんの家族について質問をしてきました。
そこでSさんは、「実は……」と、母親がすでに亡くなっていることを伝えました。
そして、たぶん引かれるだろうなとは思いつつも、母親の霊がいつも自分を励ましてくれることも一緒に話したそうです。
するとAさんはSさんが驚くほど真剣に話を聞いてくれて、
「Sちゃんがいい子で頑張っているから、お母さんも天国からずっと見守ってくれているんだね」と優しい言葉をかけてくれたそうです。
そのことにSさんは感激して、こんな話も優しく受け入れてくれるAさんの気持ちを、自分も受け入れたいと思ったのだそうです。
その夜、SさんはAさんの告白にOKを出し、晴れて2人は恋人同士になりました。
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コメント(1)
  • ❤️幸せを築いてって欲しいと思います。

    2021/11/15/03:27

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