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心霊

四々子さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

変質
短編 2021/10/28 17:34 2,857view
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母の歳の離れた兄、叔父から昔聞いた話です。
当時中学生だった叔父の通う学校は町外れの山の中にあり、子供も多くはない割には大きな校舎を構えた、まぁよくある田舎の中学校だったそうです。

叔父が二年生に上がった春、新任教師として若い男性が赴任してきました。
彼は真面目で、エネルギーに溢れ、人懐こい一面もあり、と大変好かれる性格をしており、教員はもちろん、多感でやんちゃな時期の生徒の大半からもウメちゃん先生(このあだ名が定着しすぎて、叔父は本名を忘れてしまったようです)と呼ばれ親しまれていたそうです。
悪いことをした生徒に「コラッ」と一喝すると、頭を軽く叩いた後は笑って諭すような、当時は珍しい先生だったと叔父は言います。

そんなウメちゃん先生が赴任してきてから数ヶ月後、梅雨の時期を少し過ぎた頃に、一週間ほど連続で豪雨が降り続きました。叔父ら中学生はのん気に構えていたようですが、教師ら大人は土砂崩れの心配をして頻繁に話し合っていたといいます。
そして、案の定、土砂崩れは起きました。
「ドドド、という音がしてな、バツンと暗くなってな、女子の悲鳴がうるさくてな……」
と叔父は言っていました。
詳しいことはわかりませんが、土砂の影響で停電したのでしょう。教師がざわつき始めました。

しばらくすると、女性の教師が教室にやってきて
「今、ウメちゃん先生が町まで行ってるから。大丈夫だからね。」
と叫ぶなり、下の階へバタバタ降りていきました。どうやら各階の教室に同じように通達していっているようです。
しかし、窓の外は雨と、それが砕けた霧で数メートル先も見えないような状況で。
ウメちゃん先生は翌日、崖下で亡くなっているのを発見されました。

中学校を包む悲しみが癒えてきたころ、叔父の同級生が誤って窓ガラスを割ってしまったそうです。
すると、
「コラッ」
と。
たちまち中学校中で噂になりました。ウメちゃん先生の幽霊が、悪いことをした生徒を叱りに来る、と。

気味悪がる生徒もいる一方、ウメちゃん先生の人徳の賜物か、好意的に受け取る生徒も少なくないようでした。
宿題を忘れて、コラッ。喧嘩をして、コラッ。私語をして、コラッ。
叱る以外の害がないという事もあり、叔父が三年生になる頃にはウメちゃん先生の幽霊は案外受け入れられていて、おい、叱られるぞ!といった冗談まで飛ぶようになったといいます。
ウメちゃん先生の叱咤のおかげか、叔父たちは何事もなく卒業し、叔父は高校へ進学し、三年生になりました。
高校生最後の夏、何かやんちゃがしたいと思った叔父は、ウメちゃん先生の幽霊をネタに、同級生の男女を誘って夜の中学校へ忍び込み肝試しをやろうとしたそうです。
キャッ、キャッ、とはしゃぎながら中学校の門を乗り越え、校舎に入りました。
肝試し、とは言っても、ウメちゃん先生の幽霊以外は何の変哲もない中学校です。何かが起こるわけでもなく、ウメちゃん先生の声も聞こえず、だんだん物足りなさが出てきたそうです。
別の中学から進級してきたやんちゃな同級生が、チェッ、と舌打ちしながら教卓を蹴ると

「オ”ア”アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ビリビリと、窓ガラスが震えるほどの怒号が、校舎に響き渡りました。
バゴッ!!
後頭部に衝撃が走った瞬間、誰からともなく校門に向かって走り出したと言います。

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コメント(1)
  • ほんのりいい話かと思ったら怖かった…(・・;)

    2021/10/28/17:42

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