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心霊

serikaさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

早く来い
短編 2020/12/25 18:14 1,821view
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現在55歳の叔父の話です。
彼は幼い頃から喘息持ちで、大人になっても発作を頻発させていました。20年以上前のある冬の夜にも発作を起こしてかなり深刻な状態に陥り、妻である叔母さんに救急車を呼んでもらいそのまま手術室へ。
手術台の上で、叔父は呼吸できない苦しさに喘ぎながらも何故かしっかりと目を開けているという感覚があったようです。呼吸困難のせいか麻酔のせいかはわかりませんが、おそらく意識が朦朧となっていたがゆえの幻覚や浅い夢のようなものでしょうか。

オペ室には無影灯というのがあるかと思います。あの電球が環状に並んでいる丸い電灯です。叔父はそれを見たくないのに目が離せなかったそうです。その輪になった電灯ひとつひとつが、見知らぬ男たちの苦悶の顔になっていたからです。そして男たち全員が「早く死ね」「早く来い」と口々に言い、無影灯の真ん中の電灯がある部分にはぽっかりとした真っ黒な穴が空いていたそうです。この穴に吸い込まれたらヤバいと叔父は本能で悟りましたが、苦しさに喘ぐだけの彼に為すすべは無く、とにかく「まだ逝きたくない」と強く思いながらそのままスッと意識が途絶えました。

かなり危険な状態だったにも関わらず叔父はその夜奇跡的に生還できました。それでもしばらく入院が必要ということで、気が進まないながらも仕方なく病院に留まることにしたそうです。叔父は幼少時より霊感というものがかなり強いらしくさまざまなモノを見てきたそうですが、その病院がとても嫌な雰囲気だと感じていたので不安だったようです。
手術を終えた翌日の夜。叔父は消灯後にイヤホンをしてテレビ(あるいは持ち込んだポータブルプレイヤー?)でライブのDVDを鑑賞していました。当時人気だったglobeというグループの映像です。異変はすぐに起きました。
メンバーの女性ボーカルのみが映るシーンに切り替わった瞬間、叔父は映像の中の彼女の顔に違和感を覚えました。彼女は斜め前に顔を傾けて歌いながら、じっと叔父を見つめているのです。別にそれだけならカメラを観ているだけのことですが、顔の向きと目線が大きくズレていてなおかつ瞬き一つないのは不自然でした。そして一向に画面が切り替わらず、横目でじっと見られ続けている。というより、睨み付けられている…。
叔父は徐々に気付きました。女性ボーカルの顔が変化していっていることに。たしかに歌っているのは彼女だし衣装もずっと同じなのに顔が全く違う。その顔には見覚えがあります。昨日の無影灯で見た男のうちのひとりでした。
イヤホンから聞こえるのはもうglobeの歌ではありません。いくつものうめき声が耳に直接入り込んできます。叔父が動けないでいると、男は女性ボーカルと顔をすげかえた状態で言いました。
「あと少しだったのにな」
映像の中ではっきりとそう言ったようです。叔父は恐怖のあまり気絶したそうですが、その後特に大病はしていません。このことは兄である私の父にしか話してないそうです。

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