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心霊

てんつるさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

脳裏に焼き付く「何か」
長編 2021/10/27 12:27 2,039view

でも後ろを振り返れない。

恐怖だけがどんどんと加速して行き、手を洗っている時間がまるでフリーズしたように永遠に感じられました。

夫ではないその「何か」は何故かは分かりませんが私の脳裏にはっきり映っているのです。

長い髪をした女。

顔は分かりません。

その女がずっとこちらに向いて後ろに立っている。

怖くて怖くてたまりませんでした。

意を決して走り出し、急いで夫がいる寝室のベッドに戻り夫を起こしました。

「どうしたの?」とびっくりする夫、私は怖さのあまり、身体が震えて泣いていました。

「怖い!とにかく怖い!変なのがいたの!」

と、夫からしたら何を言っているんだ?と思われたでしょうが、その「何か」を説明するのも怖くてそれ以上は話ができませんでした。

しばらく夫が起きてなだめてくれたので、次第に安心感も戻ってきて、私は再度眠りにつくことができました。

あの「何か」は一体何だったのかは今でも分かりません。

そしてどうして震えて泣くほど怖かったのか、自分でも分かりません。

人間、本当に恐怖だと震えて泣くものなのか、というのも初めて経験しました。

それ以来、不思議な体験や怖い体験をすることはなかったのですが、「原因はこれなのでは?」ということがひとつ思い浮かびます。

私たち夫婦が引っ越したこの物件の真隣が納骨堂だったのです。

そして寝室にしていた部屋の窓を開けるとすぐ納骨堂が見えます。

私も夫も特に霊感がないので、引っ越し先の真隣が納骨堂でも全く気にしていなかったのですが、後々考えると立地の問題だったようにも思えます。

結局、その住まいは1年くらい住んで別のところにまた引っ越すことになったのですが、その引っ越し先ではそういった不思議な体験は全くしなくなりました。

私たちが退去した後も、すぐに次の住人が決まったようですが、その人は無事なのか気になります。

あれは一体何だったのか、結局3つとも姿というものは見ないままだったのですが、気配や感覚、そして脳裏に焼き付いてくる感覚は今でも不気味です。

そして、今この文章を書いている時、一番私が怖い思いをした、ちょうど先ほどの女の話を書いている時だったのですが、急に自分の足が吊ってしまいました。

書くのを中断して応急処置をしたらおさまりましたが、足がとても冷えています。

滅多に足が吊るなんてことはないのですが、何だったのでしょうか。

書いていてもやはりあの脳裏に焼き付いた女の姿は鮮明に思い出せます。

普段は思い出さないようにしていますが、こういった不可解で自分にしか分からない恐怖というものはなかなか記憶から消すことはできないもののようです。

私の不思議で怖い体験でした。

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