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とろとろさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

きつねに取り憑かれたお父さん
短編 2021/10/09 15:48 1,286view

これは、私の知人である60代くらいの女性から聞いたお話しです。

彼女がまだ幼い頃でした。
彼女の一家は、少し前まで海の近くの家に住んでいましたが、引っ越しをして、今度は山の近くの家に住み始めたそうです。

引っ越してきたばかりのある日、彼女のお父さんは、山へ山菜を採りに行きました。
そして、その日、山から帰ってきたお父さんと、家族皆んなで、いつも通り夕食を食べていました。

彼女のお父さんは、日本酒が好きな方で、その日も日本酒を飲みながら夕食を食べているのですが、その日は、どうもいつもと様子が違い、どう見ても、いつものお父さんの姿では、ありませんでした。

正確に言うと、姿形は、お父さんのままなのですが、舌をペロペロと出していて、その様子は、まるで、きつねのようだったそうです。

また、急に「油揚げが食べたい!」言いだし、油揚げを差し出すと、他のおかずよりも美味しそうに食べていて、これは、おかしい。と家族みんなが思いました。

なぜなら、彼女のお父さんは、油揚げが嫌いだったからです。

これは、きつねの仕業だと気づいた彼女のお母さんは、お父さんをお祓いしてもらいに、きつねのお祓いをしてもらえる場所へ連れて行くことにしました。

お祓いをしてくれる場所へ着き、お祓いをする方に彼女のお父さんを見てもらいました。
すると、「これは、メスのきつねだ!メスのきつねが、この人を好いてついてきたんじゃ!」と言い、お祓いをしてくれたそうです。

無事にお祓いが終わり、お祓いをしてくれた方が、「早めに来て良かった。取り返しのつかんことにならんくて良かったなぁ。もう、ついてこられんように気をつけなさい。」と言ってくれたそうです。

なんでも、そのお祓いをしてくれた方のお話しによると、取り返しのつかないことというのは、そのまま放置していると、メスのきつねが、お父さんを連れて行ってしまうそうです。

また、メスのきつねは、男性についていき、オスのきつねは、女性についてくるそうです。
そのきつねの好みにもよるけれど、基本的には、優しい人間についていきやすいそうです。

確かに彼女のお父さんは、温厚な方で、お父さんが怒っている姿は、一度も見たことがなく、とても優しい人だったそうです。

お祓いをしてからは、いつものお父さんに戻り、もう、きつねにとりつかれることもなかったと彼女は言っていましたが、きつねにとりつかれることって、本当にあるんだなと幼い頃の彼女も、そして、この話を聞いた私も思いました。

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