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呪い・祟り

ブラジル産さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

見た人達が総じて死神と名付ける存在
短編 2021/09/30 19:04 1,497view

私の大学時代の友人の話です。当時私は大学三年生で、ジャズバンドのサークルに加入していました。
同級生で同じ学科でもあるM子とは特に仲が良かったのですが、彼女は夏頃にお父さんが病気で入院してからは、学校やサークルを休みがちになりました。

ある時久々にM子がサークルに顔を出し一緒に練習をしていると、彼女の携帯が鳴り出しました。電話を取った彼女はしばらくすると顔が青白くなり、電話を切ると同時に私に今すぐ病院に送って欲しいと縋りつきました。聞くと彼女のお父さんが危篤状態だというのです。

私は車で通学していたため、急いでM子を乗せて病院まで飛ばしました。道中祈るように両手を合わせていた彼女の姿は今でも忘れられません。病院前につけると
彼女は車のドアを開けて一目散に中へ走っていきました。

それから一時間後、車で待機している私に、M子からお父さんがそのまま亡くなったと連絡がきました。
その後葬儀などでM子は忙しくしており、しばらく顔を合わすことはありませんでした。ようやく落ち着いた頃、あの時送ってくれたお礼をしたいとM子から連絡が来ました。そして、久々の再会の際に、彼女が遭遇した不思議な話をしてくれたのです。

彼女が小学生の頃、母方の叔母さんが癌になり、彼女は毎週お母さんと病院にお見舞いに行っていました。
叔母さんの入院している病室は4階の廊下の一番奥の部屋。ある時いつもの様に叔母さんの元を尋ねると、りんごジュースが飲みたいと言われて、彼女は一人で一階の売店へ買いに行きました。

お目当てのジュースを購入して4階まで戻り、病室へ走っていく途中で、彼女は思わず立ち尽くしました。
廊下の奥の叔母さんの部屋の前に、黒いローブを被った骸骨が立っているというのです。
それは怖い話の絵本で見たのと同じ、大きな鎌を持った死神でした。こわばる彼女に、死神は手を伸ばすと、かくん、と手首を降ろして、まるでこっちへおいでと言うかのように手招きをしたそうです。
M子は怖くなり首を降って後ずさりをすると、死神は手を降ろして叔母さんの病室へ入って行きました。その瞬間、病室から鳴き声が聞こえ、慌てて駆けつけるとお母さんに手を握られたまま、叔母さんが亡くなっていたのだそうです。

「お父さんの病院に送ってもらった時ね、病室の前にあれがいたの」

その死神はやはり彼女に向かって手招きし、立ち尽くす彼女を見て、お父さんの病室に入っていったそうです。その数分後、お父さんはM子とお母さんに看取られながら息を引き取ったのです。

「あの時、私が死神について行ってたらお父さんは助かったのかもなって、今でも思うの」
そう言って涙を浮かべる彼女に、私は何も言ってあげることができませんでした。

彼女の前に現れたそれが何者かは分かりませんが、きっとこうした不思議な何かを見た人達が、総じてこれを死神だと名付けるのだろうと思います。

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