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不思議体験

FBSさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

山で一定の距離を保って追いかけて来る誰か
短編 2021/09/17 22:18 1,241view

私は過去に仕事のトラウマによってしばらく働きもせず、就職活動もせず、ただ持て余した身体と居場所の無さから平日登山をするという毎日を送っていたことがあった。

山に対する不思議な話や、怪奇現象や呪いなどよく聞いたり、インターネットや書籍でも読むことができる。
自分も登山をする毎日を送っているなかで、いつの間にかそういった出来事を知っているようになった。

ある山の岩を指さしてはいけない、ある方向を向いて立ち小便をしてはいけない、その山ではあることを言ってはいけないなど。
知ってはいたものの、特段気にとめるものでもなく平日毎日登り続けた。

その登山道の道中で亡くなった方を弔うための御花が沿えてあるのを度々見かけることはあった。
それでも、事故であり山にいることもあってそれも一部と考え気に留め続けることもなかった。

そんな割と現実的で自然派な自分がある山を通常通り登ってある日のことであった。

自分の登山スタイルは基本的に住む県内の日帰り登山である。
朝に車で現地へ向かい夕方には下山して帰宅するという流れだ。

その日もいつもと同じような流れで登頂した。
自分しか居らず一本道ということで下山を始めるとすれ違う人が居ない限り自分が最後の下山者ということになる。
下山を始め夕方に向け陽が陰ってくると時間も迫ってくるので急ぎ気味に早いペースで下山していた。

だが不思議なことに気づく。
自分の後ろに下山する人間は居ないはずなのに、一定の距離を保ったところからずっと誰かが付いて降りてくる気配がある。
しかも自分はかなりハイペースだからよほどの人間はついて来れない。

それでいて不意に人の声のようなものが時々聞こえてくる。
何を言っているかはわからない。
途中の藪から誰かが登山道に出てきて下山を始めたとは、とても深い藪であり地形的にまず考えられない。
なんというのだろう、付いてくる音だけでなく時々の人の声だけでなく、体全体にも訴えかけてくる迫ってくる感覚があるのだ。

なんとか急いで下山し無駄な動作することなく駐車場停めてある車に乗り込みすぐ出発した。
峠道を下りきる迄、車の後ろから誰かが見ている同じ速度で常についてきている感覚がある。
だが国道に出た瞬間少しの安堵間とその迫る存在が薄まっていくことを感じた。
たが最後までトンネルを通過する時に、車のルームミラーで後ろを見ることは出来なかった。

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