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  • 10/1 9月度怖い話グランプリを決定し、殿堂入りを追加しました。

心霊

ブラジル産さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

『あの部屋』の女の子
短編 2021/09/13 12:09 375view
私は不動産会社の賃貸部門で働いています。これは私が数年前に体験した、ある物件での出来事です。
私は当時営業事務として働いており、入社3年目のためまだまだ下っ端。店舗の雑用全般を行っていました。

この中でも手間がかかるのが物件の写真撮影です。物件情報をポータルサイトに掲載するため建物の外観や内装を撮るのですが、1ヶ月ごとのノルマの件数が決まっており、その撮影に追われる日々でした。

その日は8月のとても天気のいい日で、いい写真が撮れそうだと、朝から写真撮影に出発しました。
先輩に物件と鍵の所在地のリストを作ってもらい順々に回っていくのですが、目標まであと2件と迫ったところでだいぶ日が傾いてきており、次の撮影が最後になりそうでした。

私が最後の一軒として向かったのが、12階建ての大きなマンションでした。人気の住宅地から少し山あいに入ってはいますが、そこそこ小綺麗な物件です。
撮影に指定されていた部屋の鍵は集合ポストの中に入ってあるとのことだったので中を開けると、茶封筒の中に数部屋分の鍵が入っていました。見てみると、先輩のリストにはないけれど、まだ写真撮影をしていない部屋の鍵が一つあり、なんとか目標件数を達成したかった私は、その部屋も追加で撮影することにしました。

先にリストに入っていた部屋の撮影をし、急いでもう一部屋へ向かいました。鍵を開けて中へ入ると、玄関から続く廊下の先にリビングが見えました。リビングは大きな窓に面しており、夕陽で薄暗く照らされていました。私は早速ブレーカーを上げ、玄関、トイレ、浴室、と手前から電気をつけて順に撮っていきました。続いてキッチンを撮影しようとリビングへ入った瞬間、ゾワッと鳥肌が立ちました。

リビングの真ん中に、こちらを向いて4、5歳くらいの小さな女の子が立っているのです。部屋はまだ薄暗いのに、逆光となったその子の顔は何故か真っ黒でした。

この子はまずい。

私はじりじりと後ずさりし、廊下に出た瞬間背を向けて玄関へと走りました。パニックでブレーカーを下ろしたかどうかもあやふやなまま、鍵をかけて急いで車に飛び乗り、会社へと飛ばしました。早くしないとあの子がついてきてしまうのではないかと恐ろしかったのです。

無事会社へ辿り着いた私は少し落ち着きを取り戻し、さっき見たことは先輩には言わないでおこうと決めました。気味悪がられても嫌ですし、思い出すのも怖かったのです。

「リストの物件はほぼ撮れました。あと、最後の物件、ポストに撮影してない部屋の鍵もあったので、そこも少し撮って来ました」
そう言って先輩にリストを渡すと、先輩はリストを眺めて、え、と声を上げました。

「あの部屋入ったの」

嫌な予感がして話を聞くと、その部屋では数年前、母親が子供二人を絞殺し、それ以降空き部屋となっていたそうです。上の子はまだ幼稚園、下の子は1歳だったらしいよという先輩に、「上の子は女の子ですか」と尋ねると、「なんだ、知ってるんじゃん」と言われました。

その後入居者が決まったという話を聞きましたが、あの女の子が一緒に住んでいるのかもしれません。
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