「死んだやつに助けられたよ」

何年か前にBARで隣になったおじさん（以下Yさん）に聞いた話。

Yさん、今はある企業の役員をされていて幸せな家庭を持たれているのですが、若い頃は仕事がうまくいかず、精神的に病むことが多かったそうです。

30代前半のころのある日、やることなすこと全て裏目に出て生きる気力を失ったYさんは、東京都内のある駅で電車に飛び込んで自殺しようとしました。

あまり人がいないホームの先端で通過電車が来るのを待ち、ガタガタ震えながらも飛び込もうと覚悟を決めたその時です。

駅に差し掛かった通過電車が「ドンッバリバリ」という異音とともに急停止しました。

悲鳴が響き渡るホーム。

なんとYさんより先にホームの一番うしろで飛び込んだ人がいたのです。

その光景を遠目に見たYさんは怖くなり、その後は死のうとは思わなくなったそうです。

「死のうとしたら死んだやつに助けられたよ」

というYさんが印象的でした。