「とっておきの怖い話がある」

以前友人が働くスナックで飲んでいた時、たまたま隣に座った初老の男性が「とっておきの怖い話がある」と話してくれた話。

その男性が15年ほど前に仕事で岐阜県に滞在していた時、家の近くのスナックで飲んでいると、その時もたまたま隣に座った70歳くらいの老人と怖い話になったそうです。

地元に伝わる怖い話などを面白おかしく話してくれるその老人が、「実はとっておきの怖い話がある」と言いました。
聞かせてくれと頼むと、老人は「本当に怖い話だからその前にトイレに行ってくる」と席を立ちました。

なかなか戻ってこないのでスナックのママに「あの爺さんトイレから戻ってこないよ」と言うと、ママが
「誰？それ」

と言います。

「いやだから、隣にいた怖い話の爺さんだよ」
と言いながらカウンターの隣の席を見ると、そこには先程まで老人が飲んでいたはずのグラスがなく、綺麗に片付いています。

不思議に思った男性がトイレに行くと鍵は開いており、誰もいなかったそうです。

「あのジジイ、とっておきの怖い話を自分で作り出しやがった」

そう言ってその男性はトイレに行きました。

この人はちゃんと戻ってきました。