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ヒトコワ

希子さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

DIY好き…?マンション上階の不思議な美人女性
短編 2021/08/21 12:10 2,100view
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友人Mさんから聞いた話です。

ある時、長い間空き室だった彼女のマンションの上階に、新しく人が住み始めました。工事のような音がずっと続いていて、バスユニットの天井に水漏れがあったので管理会社に問い合わせると、上階の水道に破損がありました。それが直った事を確認するために上階へ行って扉をたたいた所、たいへんな美人が出てきたそうです。

「来月から住む予定の、有田サトミ(仮名)です。いま、大掃除をしているんです」

その人は全く悪びれずに、東京から来て近所の大学に勤務すると言いました。

それからも毎日のように工事の音は続き、Mさんは「有田さんはよほどDIYが好きなんだな」と思いました。Mさんは在宅勤務なので日中ずっと家で仕事をしていますが、引っ越しトラックが来た気配は全くなく、有田さんは空っぽの部屋で音を響かせているのです。

やがてひと月以上たったある夜、Mさんと家族は上階から女性どうしの会話が聞こえてくる事に気づきました。他人事ではありますが、「家財道具もない部屋に泊まってるんだろうか?」と訝しく思いました。そしてSNSで確認した所、確かに近所の大学勤務で有田サトミという人のプロフィールが確認できたのですが、年齢が46歳で写真が妙に老けているのです。

「私が見かける有田さんは、ずっと若くて20代くらいに見えるのに…」

甲高い声の会話は真夜中まで続き、Mさんはややノイローゼ気味に。早く引っ越しをして、家財道具を入れてくれればこんなに声が響かないのに…とうらめしく思いながら、耳栓をして在宅ワークを続けました。

ところがある夜、風の音にまじって救急車のサイレンが聞こえました。上階からバタバタとたくさんの人の重い足音、有田さんが甲高い早口で何かをまくしたてているのが聞こえ、何だ?と思っていたら急に静かになったのです。

有田さんの隣のおばさんが見聞きしていたのですが、有田さんは精神的な病気にかかっていたお母さんに薬を飲ませ、昔でいう座敷牢のような一室に閉じ込めて同居していたようなのです。そして驚いた事に、自分が母親の名前である「有田サトミ」と名乗っていたのでした。どうも相当複雑な事情があったようですが、お母さんの意思に反して無理やり閉じ込めていた事から、刑事事件に発展したかもしれない、という事でした。

おばさんは室内までは見なかったそうですが、自宅のすぐ上に座敷牢があった事、工事の音と思っていたのは娘がそれを作っていた音なのだ…とわかって、Mさんはかなり恐ろしくなり、いま引っ越しを考えているそうです。

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