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bjcさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

不自然な三角形の空き地
短編 2021/08/13 23:55 1,583view
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これは私の田舎のある地区に伝わる話です。
私のひいおばあちゃんが住んでいた家から歩いて3分ほどの場所に、不自然な三角形の空き地がありました。田舎ではありますが、周辺には家も建っていて手入れも行き届いています。なのにその三角形の空き地だけは草がぼうぼうと生えっぱなし、長いこと人の手が入っていないのです。
そう、町内会の草刈りのときも、ゴミ拾いのときも、決してその三角形の空き地には立ち入らない、という風習があったようなのです。

私はお盆になると両親とともにひいおばあちゃんの家に遊びに行っていたのですが、あるとき、その空き地の横を通りかかりました。
周辺はきちんと草も刈られてきれいに整備されているのに、三角形の形に草のぼうぼうと生えた空き地が放置されているのはなんとも不気味な気がします。
両親に聞いても「知らない」ということでした。両親はここの生まれでもないし、帰省のときに顔を出すだけなので知らなくても当然でしょう。興味すら感じないようでした。

しかし私はなぜか、草のぼうぼうと生えたその空き地に強く興味を引かれてしまったのです。
勇気を出してひいおばあちゃんに聞いてみたところ、あっさりと返事が返ってきました。
「私がまだ若い頃、あそこでお坊さんが殺されたんよ。確か、旅のお坊さんを物取り目当てで地元の人が殺したって聞いたけど」
「それってただの言い伝えでしょう?」と私が聞くと、「いいや、私も見たもの。覚えているもの。ススキの穂に血しぶきが飛んでいてね。それからあそこには誰も立ち入らないんよ。血のかかったススキを刈ったら祟られると言うてね。実際あそこに入った人は怪我をしたり病気になる」

あれから30年ほど経って、ひいおばあちゃんもとっくに亡くなり、私たち家族は帰省もしなくなりました。
ふと先日あの土地へ法事で帰ったところ、あの三角形の空き地はすっかり草が刈られ、新築の家らしい基礎ができていました。
よそから移り住んできた誰かが、あそこに知らずに住むのだなあ。近所の人は誰一人として助言をしてあげなかったのだなあ。と、私は別の意味でも空恐ろしく感じました。

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