爆弾製造工場があった街

私が住んでいる街には、戦時中爆弾を作る工場があったそうです。なんでも農家から強制的に土地を買収し大規模な工場群を造ったそうです。
その一部には古い団地が建っていました。そして、その団地も20年程前に取り壊され、綺麗なマンション群として街ごと整備されました。
ですから、もう軍の工場があったと思わせるようなものは1つもなく、緑溢れる公園とマンション群が建ち、すぐ近くの桜並木は、春になると花見客で昼間も夜も賑わう場所でもあります。

その元軍の工場があった場所の近くにはスクランブル交差点があり、信号が青になると6本の道に歩行者が一斉に渡れるようになります。

このスクランブル交差点には、古い団地がある頃から軍服や制服を着た霊が出るという都市伝説的な噂が存在しています。
しかし、この街は空襲には遭っていないので、爆弾工場での暴発事故でもあってのことか・・・と友人達と話したことがあります。

これは後日、友人が体験した話です。
そんな噂も忘れかけていたある日の夜、友人は車でそのスクランブル交差点に差し掛かりました。
信号が赤になり停車します。横の歩道の信号が青になったのですが、一向に渡る気配のない人影がありました。
なんとなく気になり見てみると、なんと軍服を着ている男性だったのです。

悲しそうな顔で立ち尽くす軍服の男性を見て友人は、「帰る場所が無いんだ…」と直感的に思ったそうです。

再開発が進んで綺麗になった街並みですが、幽霊の居場所は消えているのかもしれません。