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心霊

上町さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

海沿いの廃ホテル
短編 2021/07/27 20:46 1,380view

去年の夏、仲のいい大学生の男友達4人と一緒に廃ホテルに行ったときの話です。
その廃ホテルは海のすぐ近くに建っており、周辺は風よけの松林が広がっていました。
そしてこの廃ホテルはかつてはテーマパークに併設されており、私たちが幼い頃まだ栄えていたことから、一度は遊びにきたことがあるという人が多かったのです。
しかし不景気などが原因となり、知らないあいだに閉業、取り壊されることもなく廃墟として形を残していました。
この忘れ去られた廃ホテルのことをとくに理由もなく偶然思い出し、まだ廃墟になってからそこまで長い時間も経っておらず、少し怖いとは思いましたが、興味本位で入ってみることになったのです。

晴天のとても暑い日の日中に、肝試しなどではなく、ただ様子を見るためだけに入ると、思っていたよりも姿が変わっていないロビーがあらわれました。

まだ当時の物が残っており、陽の光も差し込んでいて、なんだか怖いというより不思議な空間に思えました。

トイレや食堂や宴会場や客間を見て回りましたが、とくに怖いことは起こりませんでした。
日が傾いてきた頃、二階の露天風呂を見に来ました。

西日が風呂場の大きな鏡に反射し眩しくて全員が目を細めながら歩いていたとき、突然入り口のドアが大きな音をたてて閉まりました。
風はなく、穏やかだった空気感に一気に緊張が走ると、仲間のひとりが大きな鏡を静かに指さしました。
私は目を疑いました。
なんと、先程までただ西日を反射していた鏡がヒビだらけになっていたのです。
私たちは大慌てで外の非常階段まで行き、駆け下りました。

走って車を停めた場所まで戻ってすぐに乗り込み、一番近いコンビニまで車を走らせました。

この日はなんだか怖くて仲間のうちのひとりの家にみんなで泊まりました。
この夜、全員のスマートフォンで撮った写真を見返していましたが、とくに写り込んでいたなどはなく、ただの穏やかな廃ホテルの写真でした。

あの時どうしてドアが勝手に閉まったのか、鏡はどうして一瞬でヒビだらけになったのか、未だに謎が残ります。

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