海の近くで車中泊はしないほうがいいかもしれません

海で体験した怖い話です。

私の実家は海に囲まれた小さな島にあるため、ショッピングモールに買い物に行くときなど、日常的にフェリーに乗る機会が多くありました。

いつものように兄が運転する車でフェリーに乗り込み買い物に行ったある日のことです。私達は帰りの最終便のフェリーに乗り遅れてしまいました。

少し車を走らせればホテルや旅館はありますが、お金に余裕がなかった私達は近くの臨海公園の駐車場で車中泊をすることに。
フェリーの始発は朝の6時半、意外とゆっくり眠れるかな、でもお風呂に入れないのは嫌だな、などと考えながらウトウトしていました。既に兄は運転席でいびきをかいています。

どれくらい経った頃でしょうか、ふと目が覚めました。

やっぱり車中泊だと体が痛いな、なんてことを考えながらなんとなく車の外を眺めていると、海の上に白いモヤのようなものがあることに気付きました。しかもそれはゆっくりと車に近づいているようです。

霧…？にしては局所的だし、煙が発生するようなものも近くにないし、何だろうと不思議に思っていると、それはゆっくりと人の形に変化していきました。

もしかして霊的な何か…？と気づいた瞬間パニックになった私は、兄を起こそうとしました。が、体が動きません。生まれて初めての金縛りです。

なんとかして兄を起こさなきゃ…そう思うのですが、目を動かすのが精一杯で声を出すことすらできません。

その間も白い人影はゆっくりと確実に車目掛けて近づいてきており、もう目の前。
車に入ってきたらどうしよう、そう思っていたら、なんと人影は正面からボンネットをすり抜け本当に車に入ってきてしまいました。

私と兄の間をすり抜けていく白い人影。
通り過ぎた瞬間、金縛りが解けました。

急いで兄を起こすと、兄も同じく金縛りに遭っており白い人影を見ていたそうです。

結局、白い人影の正体はわかりませんでしたが、兄は近くの橋から飛び降りた人の霊ではないかと言っていました。

それにしてもわざわざ車の真ん中を通り過ぎるなんて迷惑な幽霊です。
怖い話が好きな兄はネタができたと喜んでいましたが、私にとっては一生忘れられない怖い体験となりました。