奇々怪々 お知らせ
           
  • 7/1 6月GPを決定し、殿堂入りを追加しました。
  •        
  • 7/16 【予告】8月GPの賞品増枠予定!

意味怖(意味がわかると怖い話)

通過する人。
短編 2021/05/18 00:56 1,769view
不思議な夢を見た。
「怖い話」はもとより、文章を書く者にはいくつかの「禁忌」があるのをご存じだろうか?
「夢オチ」「実は一卵性双生児だった」のように、文脈からでは読者に推し量れない「オチ」を使ってはいけないと言うモノだ。

さて、今回はその「夢オチ」だと最初に宣言しておこうと思う。つまり、話に脈絡は無いと言うことだ。それなりに納得は出来る話ではあると思うが…

その日、私はいつもの居酒屋で飲んでいる「夢」を見た。通常の夢ではどこかが不思議にデフォルメされたり不条理なことが当たり前に行われるこのだが、その夢の中で私はごく当たり前に「いつもの酒と肴」で飲んでいただけだった。
聞き取ることは出来ないが心地よい「客のざわめき」とか「調理場から聞こえる旨そうな音」も非常にリアルだった。

カウンター席の背後にトイレがある。真後ろでは無くやや右にずれてはいるが。
ビール瓶が空いたので追加を頼もうかと考えたタイミングで、そのトイレから出てきた男がいた。カウンターに座って飲んでいれば、トイレの利用者は目の端に入る。

(いつの間にトイレに入ったのだろう?)

そう思いながら、自分の観察眼の鈍感さを自嘲してみた。
その男はしばらく店内を見まわしたあと、カウンターに座った。私と席1つ空けて。
新規の客なんだろうか?
であれば私が気付かぬわけも無いんだが、特に大きな問題ではないと思えた。男は夏用のジャケットにノーネクタイで、シャツのボタンを上から2つ3つ外しているラフな格好だ。
椅子に座ってしばし前を見ていたが、板前さんがやってきて注文を取ろうとした。

「え、え~と…生中と冷奴、あと焼き鳥のモモ串と砂肝を塩で」
板前さんは後ろに向かって「生中いっちょう!」と声を張り上げて、カウンターの向こう側に用意してあるお通しを男の前に置いた。
「あ、すいません、おしぼりまだでしたね」
板前さんが差し出したおしぼりで男は顔をぬぐった。そのおしぼりが薄く茶色に染まったのは、よほど汗をかいたのだろう。

すぐにやってきた生中を一気に半分ほど飲むとお通しに箸を付けた。

夢の中の私はどうにもこの男が気になっていた。
話しかけるタイミングを探しながら数分後、思い切って普通に話しかけようと考えた。

「失礼ですが、あなたはこのあたりの人ですか?」
そう話しかけると男は何故か考え込んだ。たっぷり30秒は考えただろうか?私を無視してるわけではなく、本当に返答に困っているようだった。
そして。
「ここは東京の〇〇区ですか?」
「いや、この辺りはもう区内ではないですよ」
また男は考え込むが、急に体の力を抜いて「またか…」と呟いた。

私は男が呟いた「またか」と言う言葉が気になった。
そのまましばらくの間、お互い無言のままであったが、男が2杯目の生中に口を付け、私も新たに頼んだ瓶ビールをグラスに注いだタイミングで男から話しかけてきた。

「あの…あなたは怖い夢をみることはありますか?」
もちろん怖い夢もハッピーな夢も色々と見る。
「悪夢と幸せな夢、どっちが好きですか?」
まぁ見るなら幸せな方がいいと思うが…
「悪夢には目が覚めた時の安堵感と言う特典が付きますね、幸せの絶頂から目覚めた瞬間の哀しさはどうでしょう?僕はなるべくなら平穏な夢が一番で、その次が悪夢なんです」
「面白いですね、そう言えば悪夢から醒めた時の安堵感は格別だ。でも嫌な夢の記憶も残るし、だったら幸せな夢の方がいいかもしれないと思います」
1/2
記事編集(作者用) 作者プロフィール
管理人に連絡


コメント(2)
  • この男がいつか自分の夢に…
    と考えると怖くもあり不思議な話ですね
    面白かったです

    2021/05/18/13:27
  • お褒めの言葉、ありがとうございます。
    夢の連鎖は「リアル」でも起こるのかもしれませんね。

    コメントありがとうございました。
    山子

    2021/05/18/20:50