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心霊

橋の下。
短編 2021/05/04 23:46 719view
私は幼い頃に母から「お前は橋の下で拾った」とよく言われたが、これは全国的なモノだろうか?
バリエーションで、ミカン箱に入って川を流されてたのを拾ったとか。


私が幼少の頃住んでいた町には大きな橋があった。この町とは不思議な縁があって、市内で何度も転居したが、人生のイベントではこの町が必ずと言っていいほど絡む。

あの日は雨が降っていた。

つまらないことで父親と喧嘩をした。勢いで家を飛び出したものの、行く当てもない雨の中…
時間は深夜である。
雨の中をバイクで飛び出したのでずぶ濡れであった。
なんとなくその橋にたどり着いた。懐かしいと言うか、普段からバイクで走ってる街道なので特に感慨も無い。
高校時代に付き合っていた1つ上の女の子の弟がこの橋を「ホームレス橋」(もっと直截的な言葉だったが)と呼んでいたことを思い出したから、この橋を目指したのだろう。雨を凌ぐことは出来そうだと考えた。
「ホームレス」がいるってぐらいだから、そこそこ快適なんだろうと。

実はこの橋には曰くがあって。
それは、この橋の近くの川原が江戸時代の刑場、つまりは処刑場であったこと。市史を辿ると確かにそうである。
(この事実は後年知ったことだが)

幽霊が出るとか祟られるなんて話は聞いたことが無い。逆にこの橋のお陰で難を逃れたなんて話が出てくる。
戦時の空襲をこの橋の下で生き延びたとか。

ポケットにあるのは小銭だけだった。一晩過ごしたらソっと家に帰るつもりの「小さな反抗」であったのだが、この橋の下で生涯忘れられない体験をした。

バイク用のジャケットの内ポケットから煙草を取り出して火をつける。深々と吸い込んで吐き出す。
煙草の一服は深呼吸と同じ長さだ。

落ち着いたところで周囲を探る。ホームレスが持ち込んだのか、大量の段ボールがあった。橋の下の空間は思っていたよりも狭く、身長が低めの私でもゆったりと寝そべることが出来ない。足を伸ばしてどうにかといった広さだ。

段ボールを敷いて、段ボールを丸めて枕にして橋の下を見上げる。煙草はもう3本目だ。
橋の上を通るトラックの走行音がたまに聴こえる…
真っ暗な橋の下でそれだけが世の中との繋がりだと感じた。

妙なものが見えるようになったのは眠りに落ちようとするちょっと前だ。天井、つまり橋の下にまぁるいモノが浮かんでいる。
そのまぁるいモノは段々と増えていく。
均等に並ぶわけでも無く、大きさも様々で。
喩えるなら沸騰するお湯の表面に浮かぶ激しい泡のような。


無数の顔だった。

情けないことにこの瞬間、腰を抜かしていた。救いは、顔の目が閉じていることぐらいで、もしも目が合ったら気を失っていただろう。
そして数秒(長く感じたが)が経ち、僅かにこの光景にも慣れた頃だ。
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コメント(2)
  • けーーーーーっ!!

    2021/05/07/13:25
  • そう聞こえたので。

    山子

    2021/05/07/14:51