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不思議体験

闇に呑まれる。
短編 2021/04/08 03:48 273view
自分が昔体験した今でもモヤモヤしている出来事です。

自分が高校を卒業して初めての秋。
自分はその日何となく夕方から山に行き、湖のほとりで焚き火をしていました。キャンプなんて大層なものでなく、小さな焚き火台で火を起こしてコンビニ飯を食べるぐらいの感じです。

今となっては反省してますが場所もキャンプ場ではなく、以前釣りのときにたまたま見つけた所で、山道に車を止め、そこから5分程歩いて林を抜けたひらけた場所で他に人はいませんでした。

経験したことある人ならわかると思いますが夜の山って意外と色んな生き物の気配にあふれているんですよね。虫や蛙の鳴き声、鳥や小動物が動けばガサガサと草や木が動く。湖のほとりなので魚が跳ねればバシャンと水音がする。
加えてその日は綺麗な満月で、はじめは怖かったものの、周囲も明るく慣れてしまえばそれほどでした。

ですが、しばらくして月が翳ると異様な気配を感じました。
すぐ近くで何かに見られているような。
気づけば先程までしていた生き物の気配もありません。虫でさえも息を殺してやり過ごそうとしてるかのような完全な静寂。

自分も嫌な汗をかきながら固まっていたと思います。やがて自分の周囲も完全にその異様な気配に包まれました。
それは完全な闇。
目の前の小さな焚き火だけが見えますがそれ以外は闇。自分の身体さえも見えないほどの深い深い闇と静寂に呑まれてしまいました。

自分は目を逸らすことも閉じることもできず、次第に自分の思考も輪郭もぼやけ、まるで闇に溶けていくような感覚に。

ふとヴー!ヴー!という携帯のバイブ音で我に返りました。
着信は親からのどうということはないメールでしたが、気がつけば周囲は先程までに戻っており、虫も鳴き生き物の気配に満ちていました。

自分は急いで焚き火台と荷物を片付け、自分の車に戻りました。荷物を片付ける余裕があったのは先程まであった異様な気配も闇もなかったからです。それでもまだ水をかけて畳んだ焚き火台は少し熱かった記憶があります。その後は無事に帰宅しました。

ですが10年以上経った今でも疑問に思うことがあります。
何故あの日自分は急に山に行こうと思ったのか。
当時の自分は免許取ったばかりで、ヘタレな自分が一人で夜の山に行こうなどと思いつきもしません。自分は釣りこそ好きですがそれ以外のアウトドアに興味はなく、焚き火台も自分で買った記憶もないのです。

何となくですが、あの日本当はもう一人いたような気がしてならないのです。
そいつに誘われて山に行き、一緒に話しながらご飯を食べ、焚き火も楽しんでいた。
そいつは自分が心許せる親友のような存在だったのではないか。
そしてそいつはあの闇に呑まれてしまったのではないか。

親や周囲の友人に聞いてみたのですが、何人かが
「お前といつもよくつるんでいた奴がいたような…」
と曖昧な答えで、仲のいい友人達もあの日以来何となく違和感を感じているようでした。
ですが写真や携帯のデータにもそれらしい痕跡もなく、唯一あるのは自分で買った覚えのない焚き火台だけ。

10年以上経った今となってはもうどうすることもできず、ただ何となくあの日を忘れたくないという思いだけが今でも燻っています。
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