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不思議体験

キミ・ナンヤネンさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

アパートの裏で
長編 2021/04/06 02:37 6,590view
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カーテンを開け外を見ると、そこにはお墓がびっしりと密集していた。ざっと数えると大小合わせて200基はあった。
この住宅街に墓がほぼ隙間も無く密集しているのは何とも不気味としか言いようが無かった。
その異様な光景に気を取られていたが、俺はあの灯が何か確認しなければならない。

墓地には細い通路が縦横にあり、あるお墓の前に3人の人影が確認できた。
3人は歩き疲れたのかお参りをしているのか、仲良く1列に並んで座っている。
その宗派では松明のような灯を使ってお参りをする作法なのかとも思ったが、何かがおかしかった。

座っている人影は、黒い影が立体的になった感じで、その輪郭ははっきりとしていない。
周りが暗いから人影もはっきりと見えないのかとも思ったが、人影は微妙にゆらゆらとしている。
灯は一人につき一つずつ、頭上1メートルほど離れて浮いていた。
よく見ると、人影の揺れに合わせて灯もゆらゆら揺れている。
その灯は、松明などではなかった。

「人魂だ…!」

そう思うと同時に窓とカーテンを慌てて閉めた。閉めたと同時に
「ただいまー。」
と言ってCが帰ってきた。
「…お帰り…。」
反射的に返事をしたが、何か見てはいけないものを見た気がして、内心かなり動揺していた。

「お?どうした?何もなかったか?何か見たのか?」
Cは俺の心を見透かしているかのように聞いてきた。
「何も無いよ…。」
「だったらいいんだけどさ。」

俺はCの言葉に続けて
「それがさ、明日母と買い物に行く約束してて、明後日だと思ってたけど、さっき確認したら明日だったんだよ。今日はこれで帰るわ。」
「…そうか。わかった。」

「もっと遅くまで飲みたかったけど、遅くなると母に怒られるんだよ。ハハハ…。」
俺は帰りたい気持ちが抑えられなくなり、とっさに嘘を言ってしまった。

俺の家は駅で言うとここから4つ先でまだ終電はあったが、暗い中を歩きたくないのでタクシー呼んだ。
タクシーは10分後に来るらしいので、帰り支度をしてCのアパートの前に二人で出て待っていると、ほどなくしてタクシーが来た。
「C、今日はありがと。また飲もうよ。」
「ああ。今度はゆっくり飲もう。気を付けて帰れよ。」
「ありがと。お疲れ様!」
そんな事を言いながらタクシーに乗った。
ところが、運転手はなかなかドアを閉めない。
「運転手さん、ドア…。」
「ああ、はい。」
どうしたんだろうと思うと
「いえね、前にお客さんの服をドアに挟んだことがあって、ちょっと確認してたんですよ。」
それがとっさに出た言葉だという事がその様子で何となくわかったが、本当の事はわからない。

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コメント(1)
  • アパートの裏が墓地だったら、住むのは無理かも。

    2023/04/26/19:06

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